インド経済は堅調です。高い成長率、安定した物価、政府による構造改革の継続。マクロ指標だけを見れば、投資先として理想的に映ります。それでも、インド株は最高値更新から遠ざかっています。
なぜ「適温経済」にあるはずのインド株で、海外投資家は勝てないと判断しているのでしょうか。本稿では、海外資金の動きと世界的な投資テーマの変化を軸に、その理由を整理します。
インド経済は「適温」にある
インドの実体経済は引き続き強い状態にあります。実質GDP成長率は7%台と高水準を維持し、インフレも比較的安定しています。
政府は物品サービス税の引き下げ、労働市場改革、銀行規制の緩和、原子力発電の推進など、成長を後押しする政策を重ねています。中央銀行による流動性供給もあり、経済全体は過熱も失速もしていない「ゴルディロックス状態」と評価されています。
それでも海外資金は流出している
経済が好調であるにもかかわらず、株式市場からは海外資金が流出しています。2025年を通じて海外投資家は大幅な売り越しとなり、2026年に入ってからもその流れは止まっていません。
注目すべきは、国内投資家が買い支えている点です。国内資金によって株価指数はプラスを維持していますが、海外投資家の評価は厳しいままです。この温度差が、現在のインド株市場の特徴です。
「相対的な弱さ」が意識される理由
海外投資家が問題視しているのは、インド株そのものの悪さではなく「相対的な弱さ」です。
2025年以降、世界の投資テーマは明確にAIへと傾きました。AI関連株やデータセンター、半導体、資源といった分野がリターンを生み、資金を吸収しています。
インド市場はITサービス企業は多いものの、AIや半導体といった分野の上場企業が少なく、テーマ性で見劣りします。その結果、先進国株や他の新興国株と比べて、リターンが相対的に低く評価されました。
中東マネーの行き先が変わった
ソブリン・ウェルス・ファンドの動きも象徴的です。2025年には、インド向け投資額が前年から大幅に減少しました。
特に中東勢の資金は、AIやデータセンター関連を中心に米国へ向かいました。これは株式投資だけでなく、直接投資にも影響を与えています。
グローバル資金は常に「最も伸びる分野」を探します。成長が安定しているだけでは、資金を引き留める理由になりにくくなっています。
新興国の中でも進む選別
新興国全体が売られているわけではありません。
AIやハイテク株を多く抱える市場、資源価格上昇の恩恵を受ける国には資金が集まりました。結果として、同じ新興国であっても株価パフォーマンスには大きな差が生まれています。
インドは経済成長国でありながら、現在の投資テーマと噛み合わなかったという位置づけです。
ゴルディロックス経済と投資のズレ
ここで重要なのは、「経済が良い=株が上がる」わけではないという点です。
ゴルディロックス経済は、企業収益の安定には寄与しますが、爆発的な株価上昇を生むとは限りません。投資家が求めているのは、安定ではなく「超過リターン」です。
適温経済は、投資対象としてはむしろ地味に映ることがあります。
インド株は本当に不要なのか
もっとも、インド株が不要という話ではありません。
AIブームが過熱し、将来の調整リスクが意識される局面では、インド株は分散投資先として意味を持ちます。AIインフラに過度に依存しない成長モデルは、ポートフォリオ全体の安定性を高める役割を果たします。
短期のテーマ投資ではなく、中長期の資産配分の視点が重要になります。
結論
インド株が最高値から遠ざかっている理由は、経済の失速ではありません。
世界の投資マネーがAIと資源に集中する中で、相対的に選ばれにくい市場になったことが最大の要因です。
適温経済は安心感をもたらしますが、投資家にとっては必ずしも魅力的とは限りません。2026年もインド株の評価は、AIブームの行方と、地政学的なポジショニング次第で揺れ動くことになりそうです。
参考
・日本経済新聞「『適温』インド株、遠い最高値 海外勢、今月も売り越し AI・テック不在が弱みに」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

