衆議院の解散は政治日程の問題にとどまりません。税制の世界では、年度末までに成立しなければ「自動的に不利な制度へ戻る」仕組みが数多く存在します。
2026年度税制改正法案が3月末までに成立しなかった場合、私たちの生活や企業活動に、想像以上に広範な影響が及ぶ可能性があります。
1.関税の「暫定税率」とは何か
輸入品にかかる関税には、一定期間だけ税率を軽減する「暫定税率」が設けられているものがあります。主に農産品を中心に、国内供給だけでは需要を満たせない品目について、価格高騰を防ぐ目的で活用されています。
2026年3月末には、トウモロコシやチーズなど約400品目が期限を迎えます。本来は1年間延長される予定ですが、法改正が間に合わなければ、4月以降は基本税率に戻ることになります。
2.関税が戻ると何が起きるのか
例えば、トウモロコシは現在、暫定税率により無税です。これが基本税率に戻ると、50%または1キログラムあたり12円のいずれか高い税率が適用されます。
原料を海外に依存する食品メーカーはコスト増を避けられず、最終的には販売価格への転嫁が進む可能性があります。家計への影響は、じわじわと、しかし確実に広がっていくことになります。
3.不動産取引への影響も見逃せない
影響は関税だけではありません。不動産の所有権移転登記にかかる登録免許税は、現在1.5%に軽減されていますが、法改正がなければ本来の2%に戻ります。
不動産取引は税率変更に敏感です。特に住宅取得や相続を控えている世帯では、取引時期の判断に影響が出る可能性があります。
4.事業承継税制にも期限の壁
中小企業の事業承継に関する相続税・贈与税の特例措置も、申請期限が3月末に設定されています。政府は延長方針を示していますが、法改正が遅れれば、形式上はいったん制度が終了することになります。
制度の継続性が揺らぐこと自体が、事業承継の意思決定を鈍らせる要因になりかねません。
5.「すぐ影響が出ない」制度ほど危うい
国際観光旅客税(出国税)の引き上げや、年収の壁の見直しなど、影響が表面化するまでに時間がかかる制度もあります。しかし、事業者のシステム改修や価格設定の準備を考えると、成立が遅れるほど現場の負担は大きくなります。
結論
税制改正法案が年度末までに成立しなければ、多くの制度は「自動的に不利な状態」に戻ります。これは増税というより、「延長されるはずだった減税が消える」現象です。
家計や企業への影響を最小限に抑えるためには、政治日程とは切り離して税制改正を優先する判断が不可欠です。税制は静かに、しかし確実に暮らしを左右します。その空白期間をどう防ぐかが、今まさに問われています。
参考
・日本経済新聞「衆院解散で関税上げ懸念 トウモロコシなど400品目 優遇措置、3月末に期限」(2026年1月20日朝刊)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

