令和8年度税制改正大綱で示された暗号資産取引への分離課税導入は、多くの投資家にとって関心の高いテーマです。ただし、今回の制度改正は「すべての暗号資産」を一律に対象とするものではありません。
対象となる暗号資産や取引形態には、一定の条件が設けられる予定です。制度を正しく理解するためには、「どの暗号資産が分離課税の対象になるのか」を具体的に整理しておく必要があります。
分離課税の対象は「一定の暗号資産」に限定
税制改正大綱では、分離課税の対象となる暗号資産について、「金融商品取引業者登録簿に登録されている暗号資産等」に限定するとされています。
これは、無制限に存在する暗号資産を一律に金融商品として扱うのではなく、投資家保護や市場の健全性を確保できる範囲に限定するという考え方に基づくものです。
金融商品取引法との関係
今回の税制改正は、金融商品取引法の改正を前提としています。改正後は、暗号資産のうち一定のものが、金融商品取引法上の規制対象として位置づけられる見込みです。
具体的には、
- 投資家への説明義務
- 情報開示や広告規制
- 不公正取引の防止
といったルールのもとで取り扱われる暗号資産が、分離課税の対象になると考えられます。
つまり、単に「暗号資産である」という理由だけでは足りず、制度上の枠組みに組み込まれているかどうかが重要になります。
対象となる取引形態
分離課税の対象となるのは、以下の取引から生じる所得とされています。
- 暗号資産の現物取引
- 暗号資産デリバティブ取引
- 暗号資産ETF
いずれも、金融商品取引業者を通じて行われる取引であることが前提です。個人間取引や、海外の無登録業者を利用した取引などは、対象外となる可能性が高いと考えられます。
対象外となる可能性が高い暗号資産
現時点の制度設計から考えると、次のような暗号資産は分離課税の対象外となる可能性があります。
- 国内外での規制が未整備な新規トークン
- 発行主体や仕組みが不明確な暗号資産
- 投資家保護の観点から問題が指摘されているもの
- 登録を受けていない事業者を通じた取引
これらは、引き続き雑所得として総合課税の対象になる可能性が高く、税率や損失繰越の取扱いも現行制度のままとなる点に注意が必要です。
すべての取引が軽減されるわけではない
今回の分離課税導入は、暗号資産全体の税負担を一律に引き下げる制度ではありません。
同じ個人が複数の暗号資産を取引している場合でも、
- 分離課税の対象となる暗号資産
- 従来どおり雑所得となる暗号資産
が混在する可能性があります。
その場合、所得区分ごとに計算・申告を行う必要があり、実務上の整理はむしろ重要性を増すと考えられます。
結論
分離課税の対象となる暗号資産は、「金融商品取引法の枠組みの中で、投資家保護が確保された一定の暗号資産」に限定される見込みです。
今後は、どの暗号資産が登録対象となるのか、どの業者が対象取引業者になるのかといった点が、実務上の大きな判断材料になります。
暗号資産取引を行っている人にとっては、価格変動だけでなく、「どの税制が適用される取引なのか」を意識する時代に入ったといえるでしょう。
参考
・税のしるべ「暗号資産取引に分離課税を導入へ、繰越控除制度も創設」(2026年1月12日)
・令和8年度税制改正大綱
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
