特定生産性向上設備等投資促進税制が法人税実務に与える影響――2026年度税制改正・法人課税の注目点⑤(総まとめ)

税理士
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2026年度税制改正で創設された特定生産性向上設備等投資促進税制は、これまでの設備投資税制とは一線を画す制度です。
即時償却や高水準の税額控除といった強力な措置が用意される一方で、厳格な投資要件や他制度との排他関係が設けられています。

本シリーズ最終回では、第1回から第4回までの内容を踏まえ、この税制が法人税実務全体にどのような影響を与えるのかを総括します。

「設備」ではなく「投資計画」を見る税制

本税制の最大の特徴は、個々の設備ではなく「投資計画全体」を評価対象としている点にあります。

従来の設備投資税制は、
・対象設備に該当するか
・取得価額や用途要件を満たすか
といった、比較的定型的な判定が中心でした。

これに対し本税制では、
・投資規模
・収益性
・事業の方向性
といった経営判断そのものが、税制適用の前提となっています。

税務が、より深く経営戦略に踏み込む制度設計になっているといえるでしょう。

税務判断と経営判断の一体化

即時償却か税額控除かという選択一つを取っても、
・当期と将来の利益見通し
・キャッシュフロー戦略
・グループ全体での税務設計

といった要素を総合的に検討する必要があります。
税務上「有利そうだから選ぶ」という発想では、制度の本来のメリットを活かしきれません。

本税制は、税務判断が経営判断と切り離せない時代に入ったことを象徴する制度だといえます。

選別型税制というメッセージ

本税制では、投資計画について経済産業省の確認を受けることが要件とされています。
この点からも、国が「どの投資を優遇するのか」を明確に選別する姿勢が読み取れます。

高付加価値化、生産性向上、国内投資というキーワードは、
今後の税制改正や補助金政策にも共通して現れる可能性が高い軸です。

設備投資税制は、単なる景気対策から、産業構造を方向付ける政策手段へと進化しつつあります。

中小企業への波及効果

多くの中小企業にとって、本税制は現時点ではハードルの高い制度です。
しかし、その存在自体が示す方向性は、中小企業にとっても無関係ではありません。

今後、
・中小企業向け税制においても収益性や成長性がより重視される
・事業計画の質が支援策の選別基準になる
といった流れが強まる可能性があります。

本税制は、大企業向け制度であると同時に、将来の税制の「予告編」として読むこともできます。

法人税実務への影響

法人税実務の現場では、今後次のような変化が想定されます。

・税制適用の可否判断に、事業内容や成長戦略の理解が不可欠になる
・設備投資税制の選択が、単年度ではなく中長期視点で行われる
・税務担当者や税理士に、経営的視点がより強く求められる

本税制は、法人税実務の「守り」から「戦略」への転換を促す制度といえるでしょう。

結論

特定生産性向上設備等投資促進税制は、即時償却や税額控除の有利不利を論じるだけでは捉えきれない制度です。
それは、税制を通じて企業の投資行動そのものを方向付けようとする、強い政策的意思の表れです。

今後の法人税実務では、
「使えるかどうか」だけでなく
「なぜこの税制が用意されたのか」
を読み解く姿勢が、ますます重要になるでしょう。

本税制は、2026年度税制改正における一制度であると同時に、これからの法人課税の在り方を示す象徴的な制度だといえます。

参考

・2026年度税制改正大綱
・税のしるべ(2026年1月5日)
・産業競争力強化法改正の概要(公表資料)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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