中小企業はこの税制をどう考えるべきか――特定生産性向上設備等投資促進税制の現実的な位置付け(2026年度税制改正・法人課税の注目点④)

税理士
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特定生産性向上設備等投資促進税制は、その制度設計を見る限り、大規模かつ高収益な投資を行う企業を主な対象としているように映ります。
しかし、本税制では中小企業者等について投資額要件が緩和されており、「中小企業も対象外とは限らない」制度となっています。

本稿では、中小企業の立場から、本税制をどのように捉えるべきか、実務的・現実的な視点で整理します。

中小企業向けに緩和されている点

本税制では、特定生産性向上設備等と認められるための投資額要件について、次のような区分が設けられています。

・原則:取得価額合計35億円以上
・中小企業者等:取得価額合計5億円以上

この点だけを見ると、中小企業にも配慮した制度設計に見えます。
しかし、重要なのは金額要件だけではありません。

実際のハードルは投資利益率

中小企業にとって、より大きなハードルとなるのが「年平均投資利益率15%以上」という要件です。

この数値は、単なる設備更新や老朽化対策では達成が難しく、
・新たな高付加価値事業への進出
・事業モデルそのものの転換
といったレベルの投資でなければ、合理的な説明が困難です。

中小企業の場合、投資額が5億円規模になるだけでも経営上の大きな意思決定となります。その投資に対し、15%以上の利益率を計画段階で示すことは、決して容易ではありません。

経産省確認が意味するもの

本税制の適用には、投資計画について経済産業省の確認を受ける必要があります。
これは、税務手続きというよりも、政策的な投資選別のプロセスといえます。

中小企業にとっては、
・事業計画の精緻化
・数値根拠の明確化
・中長期戦略の言語化

が求められることになり、税務の枠を超えた対応が必要になります。

中小企業にとっての現実的な使い道

では、この税制は中小企業にとって「使えない制度」なのでしょうか。
必ずしもそうとは言い切れません。

例えば、次のようなケースでは検討余地があります。
・成長フェーズにあり、事業規模の拡大を前提とした大型投資を計画している
・グループ再編や事業統合に伴い、集中的な設備投資を行う
・海外展開や高付加価値製品へのシフトを明確に打ち出している

このような企業にとっては、本税制は「税制優遇」というより、「成長戦略を後押しする政策ツール」として位置付けることができます。

他の設備投資税制との使い分け

多くの中小企業にとっては、
・中小企業経営強化税制
・中小企業投資促進税制
といった既存の設備投資税制の方が、依然として実務上の主軸となるでしょう。

これらは、投資額・要件ともに現実的であり、制度の使いやすさという点では本税制を大きく上回ります。
特定生産性向上設備等投資促進税制は、あくまで「選択肢の一つ」であり、無理に適用を狙う制度ではありません。

税制が示すメッセージをどう読むか

中小企業にとって本税制の本当の意味は、「使えるかどうか」だけではありません。

この制度は、
・どのような投資が政策的に評価されるのか
・今後の設備投資税制がどの方向に進むのか
を示すメッセージでもあります。

高付加価値化、生産性向上、国内投資というキーワードは、今後の税制・補助金・支援策に共通する軸になっていく可能性が高いと考えられます。

結論

特定生産性向上設備等投資促進税制は、多くの中小企業にとって「すぐに使える制度」ではありません。
しかし、成長戦略を明確に描く中小企業にとっては、将来的に検討対象となり得る制度です。

重要なのは、この税制を単なる節税手段として見るのではなく、
自社の投資戦略や事業構想を見直す一つの指標として捉えることです。

中小企業にとって本税制は、「今すぐ使う制度」というより、「将来を考えるための制度」と位置付けるのが現実的だといえるでしょう。

参考

・2026年度税制改正大綱
・税のしるべ(2026年1月5日)
・産業競争力強化法改正の概要(公表資料)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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