特定生産性向上設備等投資促進税制はどこが違うのか――2026年度税制改正・法人課税の注目点②

税理士
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前回は、2026年度税制改正で新設された「特定生産性向上設備等投資促進税制」の制度概要を整理しました。
本制度は即時償却や税額控除といった強力な措置が用意されている一方で、適用要件が極めて厳格である点が特徴です。

本稿では、従来から存在する法人向け設備投資税制と比較しながら、この新税制がどのような位置付けにあるのか、そして企業はどのように使い分けるべきなのかを考えていきます。

従来の法人向け設備投資税制の整理

これまで法人税実務において活用されてきた主な設備投資税制には、次のようなものがあります。

・中小企業経営強化税制
・地域未来投資促進税制
・カーボンニュートラルに向けた投資促進税制
・DX投資促進税制(デジタル関連投資)

これらはいずれも、政策目的に応じて対象設備や控除率が細かく設計されており、比較的多くの企業が利用しやすい制度でした。

投資規模の違い

特定生産性向上設備等投資促進税制の最大の特徴は、想定されている投資規模の大きさです。

従来の設備投資税制は、数千万円から数億円規模の投資でも適用可能なものが多く、中小企業の設備更新や拡張投資を幅広くカバーしていました。

これに対し、新税制では、投資計画に基づく取得価額の合計が原則35億円以上(中小企業者等でも5億円以上)とされています。
この水準は、従来制度と比べて明らかに高く、大企業や成長段階にある中堅企業を主な対象としていることが分かります。

収益性要件の違い

もう一つの大きな違いが、収益性に関する要件です。

多くの既存制度では、生産性向上や省エネ効果といった定性的な評価が中心であり、数値基準があっても比較的達成しやすい水準に設定されていました。

一方、本税制では、年平均投資利益率15%以上が見込まれることが要件とされています。
これは、単なる設備更新ではなく、事業構造の転換や高付加価値化を伴う投資でなければ対象にならないことを意味します。

税制を通じて、投資の「量」だけでなく「質」を強く問う制度設計になっている点が、従来との決定的な違いです。

税務メリットの強さ

税務上のメリットという観点でも、新税制は一段階踏み込んだ内容となっています。

即時償却によって初年度に取得価額全額を損金算入できる点は、従来の特別償却制度と比べても極めて強力です。
また、税額控除についても7%(建物等は4%)という水準は、過去の設備投資税制の中でも高い部類に入ります。

一方で、控除限度は法人税額の20%に抑えられており、過度な税負担軽減を防ぐ仕組みも併せて設けられています。

他制度との排他関係

実務上、最も注意すべき点が、他の設備投資税制との排他関係です。

特定生産性向上設備等投資促進税制の適用を受ける場合、投資計画期間中は、地域未来投資促進税制やカーボンニュートラル投資促進税制などの適用を受けることができません。

従来は、複数の制度を比較しながら、案件ごとに最も有利な制度を選択する運用が一般的でした。
しかし本税制では、投資計画全体を通じた「制度の一本化」が求められます。

政策メッセージの違い

既存の設備投資税制は、裾野を広く支援する性格が強いものでした。
これに対し、新税制は、国内での高付加価値投資を選別的に後押しする制度です。

事前に経済産業省の確認を要する点からも、税務優遇を与える投資を政策的に選び取る姿勢が明確に示されています。

結論

特定生産性向上設備等投資促進税制は、従来の法人税における設備投資税制とは、対象規模・収益性要件・制度設計の思想において一線を画す制度です。

幅広い企業を対象とする従来制度に対し、本税制は高水準の投資と明確な成長戦略を持つ企業向けの「選抜型」税制といえます。
今後の法人税実務では、個別の設備単位ではなく、事業計画全体を見据えた税制選択が一層重要になるでしょう。

参考

・2026年度税制改正大綱
・税のしるべ(2026年1月5日)
・産業競争力強化法改正の概要(公表資料)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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