令和8年度税制改正大綱(総まとめ)税制は私たちに何を求め、何を前提に組み替えられたのか

税理士
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令和8年度税制改正大綱は、
一見すると大きな増税や減税がなく、
「分かりにくい改正」「静かな改正」と受け止められがちです。

しかし、第1回から第8回までを通して見てきたとおり、
今回の税制改正は、
税制の前提条件そのものを現実に合わせて組み替える改正
であることが分かります。

この総まとめでは、個別制度を並べ直すのではなく、
税制改正大綱全体を貫く考え方を整理します。


改正の出発点は「物価と制度のズレ」

今回の税制改正の最も重要な出発点は、
物価上昇と税制の前提条件とのズレです。

基礎控除、給与所得控除、通勤手当、食事補助など、
多くの制度は長年据え置かれてきました。

その結果、
本来は生活費として扱われるべき支出や収入まで、
課税対象に近づいてしまっていました。

令和8年度改正は、
「ここまでは生活費として非課税とする」ラインを引き直した改正
と整理できます。


税制は「減税」よりも「線引き」を選んだ

基礎控除や給与所得控除の引き上げは、
減税と表現されることがあります。

しかし、今回の改正の本質は、
可処分所得を積極的に増やすことではありません。

税制が行ったのは、
課税対象と生活費の境界線を、現実に合わせて修正すること
です。

そのため、
全員の手取りが大きく増える改正ではなく、
影響が出る層と出ない層が分かれています。


働き方の多様化が「前提」に組み込まれた

今回の税制改正では、
会社員一辺倒の働き方を前提とした制度設計から、
明確に転換が進んでいます。

  • 副業を持つ会社員
  • 個人事業主・フリーランス
  • 高齢期も働く人
  • 共働き世帯

これらは例外ではなく、
標準的な姿として税制に組み込まれました

青色申告、電子帳簿保存、インボイス制度の整理は、
この前提変更を象徴しています。


資産形成は「後押し」しつつ「行き過ぎは調整」

NISAは引き続き重視され、
長期・積立・分散という投資行動は、
明確に税制が支援しています。

一方で、
暗号資産やふるさと納税については、
分かりにくさや行き過ぎを是正する調整が行われました。

ここから読み取れるのは、
資産形成は勧めるが、税制の公平性は維持する
という一貫した姿勢です。


消費税・インボイス制度は「次の段階」へ

インボイス制度については、
導入するか否かの段階は終わりました。

令和8年度改正では、
制度を前提としたうえで、
負担の所在を明確にし、
経過措置を段階的に縮小する方向が示されています。

2割特例から3割負担へ進む流れは、
制度が本格運用のフェーズに入ったことの象徴
といえます。


高所得者・オーナー層への視線は「不公平の是正」

今回の改正では、
高所得者への露骨な増税は行われていません。

その代わり、
所得の受け取り方や、
法人と個人の使い分けによって生じる
過度な税負担差が問題視されました。

税制は、
「節税そのもの」を否定しているのではなく、
制度の趣旨を超えた使われ方に歯止めをかけています。


相続税・法人税制が示す長期視点

相続税や法人税制では、
税率よりも
実態・継続・次世代
という視点が重視されています。

  • 実態を伴わない形式的な対策
  • 単なる税負担回避

よりも、
事業や資産をどう次世代につなぐかが問われています。


令和8年度税制改正大綱を一言で言うと

本シリーズを通じて整理すると、
令和8年度税制改正大綱は、次のように言い表せます。

税制は、
実態に即して働き、管理し、将来につなぐ人を前提に、
静かに組み替えられている。

派手さはありませんが、
方向性は非常に明確です。


税制改正をどう受け止め、どう備えるか

税制改正は、
「怖いもの」「難しいもの」ではありません。

大切なのは、

  • 何が前提とされ
  • 何が評価され
  • 何が許容されにくくなったのか

を読み取ることです。

そうすれば、
日々の判断を大きく誤ることはありません。


おわりに

令和8年度税制改正大綱は、
短期的な損得を競うための改正ではありません。

これからの

  • 働き方
  • 暮らし方
  • 資産の持ち方

を前提に、
税制を現実に合わせて調整した改正です。

このシリーズが、
税制改正を「不安」ではなく
読み解く材料として捉える助けになれば幸いです。


参考

・自由民主党「令和8年度税制改正大綱」
・財務省「税制改正に関する資料」


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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