相続税や法人税制は、
「すぐに自分には関係ない」
と感じられやすい分野です。
しかし、税制改正大綱においてこの分野は、
国が中長期的に何を重視しているのか
が最もはっきり表れる領域でもあります。
第8回では、
- 相続税
- 法人税制
という一見別々の制度を、
「資産」「事業」「世代」という共通軸で整理し、
令和8年度税制改正大綱の全体像を締めくくります。
相続税は「強化」ではなく「整理」の段階へ
令和8年度税制改正大綱では、
相続税率の引き上げや、基礎控除の大幅な見直しといった、
分かりやすい強化策は盛り込まれていません。
一方で、
相続税の評価や適用の前提については、
かなり明確な方向性が示されています。
それは、
「相続税をどう増やすか」ではなく、
相続税をどう機能させ続けるか
という視点です。
相続税で重視されているのは「資産の実態」
今回の改正で繰り返し意識されているのは、
名義や形式ではなく、
資産の実態に即した課税です。
- 誰が実際に使っているのか
- 誰が管理しているのか
- 誰の経済的支配下にあるのか
こうした点を無視した相続対策は、
制度として想定されていない、
というメッセージが読み取れます。
生前対策をどう位置づけているか
生前贈与や相続対策そのものが、
否定されているわけではありません。
しかし税制は、
- 節税だけを目的とした対策
- 実態を伴わない形式的な移転
については、
長期的に容認しない方向
を明確にしています。
これは、相続税を
「資産を次世代へ円滑に移すための制度」
として維持するための調整といえます。
法人税制は「利益をどう使うか」を問う段階へ
法人税制についても、
税率そのものを大きく動かす改正は見られません。
代わりに強調されているのは、
企業が利益をどう使っているか
という点です。
- 投資に回しているのか
- 人材に使っているのか
- 単に内部留保しているのか
税制は、これらの違いを
より意識的に評価しようとしています。
投資促進税制が示す国の意図
研究開発投資や設備投資に関する税制は、
単なる景気刺激策ではありません。
税制としては、
- 企業が成長すること
- 雇用や賃金につながること
を前提とした投資を、
中長期的に後押しする設計
が続いています。
これは、短期的な節税ではなく、
企業行動そのものを変える狙いです。
法人と個人を切り分ける姿勢の強化
第5回で触れた高所得者・オーナー層の話とも重なりますが、
法人税制でも、
「法人は法人、個人は個人」
という切り分けが、より強く意識されています。
- 法人を通じた所得調整
- 実態を伴わない資産移転
については、
今後も慎重な視線が向けられると考えられます。
相続税と法人税制に共通するキーワード
相続税と法人税制を並べて見ると、
共通しているキーワードが見えてきます。
それは、
「実態」「継続」「次世代」
です。
- 実態のない形式的な対策は通用しにくくなる
- 継続的な事業や資産管理が重視される
- 次の世代につながる形かどうかが問われる
これが、令和8年度税制改正大綱の根底にあります。
このシリーズを通じて見えてきたもの
第1回から第8回までを通じて、
令和8年度税制改正大綱は、
決して場当たり的な改正ではないことが分かります。
- 生活費と課税の線引き
- 働き方の多様化への対応
- 資産形成の支援と調整
- 消費税の定着
- 実態重視の課税
これらはすべて、
同じ方向を向いた調整です。
税制改正大綱をどう読み、どう備えるか
税制改正大綱は、
「来年いくら税金が変わるか」
だけを見る資料ではありません。
- どんな行動が前提とされ
- どんな行為が評価され
- どんな使い方が問題視されるのか
を読み取ることで、
将来の判断を誤りにくくなります。
おわりに(シリーズの結び)
令和8年度税制改正大綱は、
静かですが、方向性は極めて明確です。
税制は、
実態に即して行動する人・企業を前提に組み替えられている
と言えます。
このシリーズが、
税制改正を「不安の材料」ではなく、
読み解く材料として捉える一助になれば幸いです。
参考
・自由民主党「令和8年度税制改正大綱」
・財務省「税制改正に関する資料」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
