令和8年度税制改正大綱では、会社員向けの制度だけでなく、
個人事業主・フリーランスを前提とした税制の整理が、かなり明確に打ち出されています。
副業や独立が一般化する中で、
「どこまでやれば事業として認められるのか」
「何をしていないと問題になりやすいのか」
という水準が、税制上はっきり示されつつあります。
第6回では、青色申告・帳簿保存を軸に、
税制が個人事業主に求めている実務レベルを具体的に整理します。
今回の改正は「負担増」ではなく「前提条件の明確化」
まず押さえておきたいのは、
令和8年度改正が、個人事業主やフリーランスに対する
一律の増税や締め付けではない点です。
税制改正大綱を通じて示されているのは、
- 記帳していること
- 証憑を保存していること
- 事業としての実態があること
という、従来から存在していた前提条件を明文化する動きです。
青色申告は「届出」ではなく「実態」が問われる
青色申告は、最大65万円の特別控除が認められる重要な制度です。
しかし、税制上は
「青色申告の届出をしているかどうか」
だけで判断されるものではありません。
令和8年度改正では、
青色申告の前提として、
帳簿が実際に整備されているかどうか
が、より重視される方向が示されています。
青色申告特別控除65万円の実務水準
最大65万円控除を受けるためには、
- 複式簿記による記帳
- 貸借対照表・損益計算書の作成
- 帳簿・証憑の保存
が必要です。
今回の改正は、
これらの要件を形式的に満たしているかではなく、
内容として機能しているか
を問う姿勢が明確になっています。
電子帳簿保存制度は「選択」ではなく前提へ
電子帳簿保存制度については、
「対応が大変」「結局、紙でもよいのではないか」
といった声も多く聞かれます。
令和8年度改正では、
青色申告と電子帳簿保存制度が、
切り離された制度ではなく、実務上は一体で運用される前提
で整理されています。
電子的に受け取った証憑の扱いが重要
特に重要なのは、
- 電子メール
- クラウドサービス
- プラットフォーム
などを通じて受け取った請求書・領収書です。
これらを
- 印刷して紙で保存する
- 検索できない状態で保存する
といった方法は、
税制上、認められにくくなっています。
「紙保存も可能」の誤解に注意
誤解されがちですが、
すべてを電子保存しなければならないわけではありません。
一方で、
電子で受け取ったものは電子のまま、一定の要件を満たして保存する
という原則が、かなり明確になっています。
令和8年度改正は、
「方法は選べるが、ルールは守る」
という整理です。
少額減価償却資産は「何でもOK」ではない
パソコンや周辺機器などについて、
少額減価償却資産の特例を利用している人も多いでしょう。
今回の改正では、この制度が廃止されるわけではありません。
しかし、
- 事業との関連性
- 使用実態
が、より重視される方向です。
私的利用が中心の資産については、
説明を求められる可能性が高まっています。
副業と事業の境界線がより重要になる
副業が広がる中で、
「事業所得か、雑所得か」という判断が、
以前より重要になっています。
令和8年度改正では、
副業を否定する姿勢は見られません。
一方で、
- 継続性
- 営利性
- 規模
といった要素を踏まえ、
事業として扱うなら相応の管理が必要
という考え方が明確になっています。
実務上、何をしていれば問題になりにくいか
レベル3の視点で整理すると、
次の点を押さえていれば、過度に構える必要はありません。
- 日々の取引を後追いではなく随時記帳している
- 請求書・領収書を取引ごとに保存している
- 事業用と私用の区別が明確である
今回の改正は、
これらをきちんと行っている人を不利にするものではありません。
税制が個人事業主に求めている姿
令和8年度税制改正から読み取れるのは、
個人事業主・フリーランスを
「簡易な存在」として扱う時代が終わりつつある、
という点です。
同時に、
きちんと管理している事業者を
不利にしない方向性も、はっきり示されています。
おわりに
第6回で見てきた改正は、
新しい義務を増やすものではありません。
税制が
これまで前提としてきた実務水準を、改めて明確にした
という性格の改正です。
次回は、消費税・インボイス制度について、
経過措置(2割特例など)を含め、
「これから負担がどう変わるのか」を、
一歩踏み込んで整理します。
参考
・自由民主党「令和8年度税制改正大綱」
・国税庁「青色申告・電子帳簿保存制度に関する資料」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
