(第5回)高所得者・役員・オーナー層への見直し 税制は「どの不公平」を問題視したのか

税理士
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令和8年度税制改正大綱を読んでいくと、
生活支援や資産形成支援と並んで、繰り返し登場する言葉があります。
それが 「税負担の公平性」 です。

第5回で扱う高所得者・役員・オーナー層に関する改正は、
増税や税率引き上げといった分かりやすい話ではありません。
むしろ、
税制がどのような不公平を問題と捉えたのか
を読み取ることが重要になります。


今回の改正は「高所得者増税」ではない

まず確認しておきたいのは、
令和8年度改正では、高所得者に対して
新たな所得税率や法人税率の引き上げは行われていない点です。

今回の改正は、
「高所得者だから負担を重くする」という考え方ではありません。
そうではなく、
所得の受け取り方によって税負担が過度に変わっていないか
という点が点検されています。


問題視されたのは「所得の形による差」

税制改正大綱の背景には、
次のような問題意識があります。

  • 給与として受け取る場合
  • 配当・利子として受け取る場合
  • 法人を通じて受け取る場合

これらは、同じ経済的価値を受け取っていても、
税負担が大きく異なることがあります。

税制としては、この差が
制度の想定を超えて拡大していないか
を問題としています。


役員報酬は「自由に決められる」わけではない

会社役員の報酬は、
法人税と所得税の両方に関係します。

役員報酬は、形式的には会社と個人の契約に基づくものですが、
税制上は、

  • 実態に即しているか
  • 利益調整の手段になっていないか

という点が常にチェックされています。

令和8年度改正では、
新たな制限を設けるというより、
役員報酬の位置づけを改めて確認する方向
が示されています。


「報酬」と「利益移転」の境界線

実務上問題になりやすいのは、

  • 役員報酬として支払っているが
  • 実質的には会社の利益を個人に移している

と評価されかねないケースです。

税制改正大綱では、
こうした取引が広がることによって、
税負担の公平性が損なわれる点が意識されています。


オーナー企業に対する税制の視点

オーナー企業や同族会社では、
法人と個人の距離が近くなりがちです。

  • 給与
  • 役員報酬
  • 配当
  • 貸付や資産の使用

といった形で、
お金や価値の移転が柔軟に行えるため、
税制上は特に慎重な整理が求められます。

今回の改正は、
オーナー企業を否定するものではありません。
企業活動と個人の生活を区別するという原則を、再確認したもの
と捉えることができます。


金融取引を通じた税負担調整への対応

一部の金融取引については、
税負担を軽減する目的で利用されるケースがありました。

令和8年度改正では、
社債利子などの取り扱いについて、
取引の実態に即した課税関係となるよう整理
が進められています。

これは、特定の金融商品を狙い撃ちするものではなく、
税制全体の整合性を保つための調整です。


一般の人にとっての意味は何か

「高所得者やオーナー企業の話は、自分には関係ない」
と感じる方も多いかもしれません。

しかし、
税制の一部で過度な優遇が続けば、
最終的には

  • 他の層の負担増
  • 制度への不信

につながります。

今回の改正は、
そうした歪みを早めに是正するためのものです。


税制が示しているメッセージ

第5回で扱った改正から読み取れるのは、
「節税そのものを否定する」姿勢ではありません。

税制が問題視しているのは、
制度の趣旨を超えた使われ方
です。

合法・違法の線引きではなく、
制度設計としての公平性が問われています。


おわりに

令和8年度税制改正における高所得者・役員・オーナー層への見直しは、
目立たない改正です。

しかし、
税制が
「どのような行為を許容し、どこで線を引くのか」
を理解する上では、極めて重要な内容です。

次回は、個人事業主・フリーランスに関係する改正について、
青色申告や帳簿保存を軸に、
税制が求める実務水準を具体的に整理します。


参考

・自由民主党「令和8年度税制改正大綱」
・財務省「所得税・法人税制度に関する資料」


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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