(第4回)資産形成税制はどこが変わったのか NISA・暗号資産・ふるさと納税から読み取る「支援」と「調整」

税理士
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令和8年度税制改正大綱では、資産形成に関する税制について、
一見すると「拡充」と「引き締め」が同時に行われているように見えます。

NISAは引き続き重視される一方で、
暗号資産やふるさと納税については、
制度の整理や上限設定が進められています。

第4回では、これらを個別に評価するのではなく、
税制が資産形成をどう支援し、どこで線を引いたのか
という視点から、具体的に整理します。


NISAは「非課税枠」ではなく「行動誘導」の制度

NISAは、投資による利益が非課税になる制度として知られています。
しかし、税制の立場から見ると、NISAは単なる優遇措置ではありません。

税制がNISAを通じて誘導しているのは、

  • 長期
  • 積立
  • 分散

という投資行動です。

令和8年度改正でも、この方向性自体は一貫しています。


「投資をする人すべて」を支援する制度ではない

NISAは、投資を行うすべての人を一律に支援する制度ではありません。
短期売買や高リスク取引を想定した制度ではないため、
制度の外側に置かれる取引もあります。

今回の改正では、
時間を味方につけた資産形成を行う層を、税制として明確に支援する
という姿勢がよりはっきりしました。


未成年者NISAに見える「時間軸」の重視

未成年者向けのNISA拡充は、
制度の対象年齢を広げただけではありません。

税制としては、
「利益が出るかどうか」よりも、
長期間にわたって資産を育てる行動そのもの
を重視していることが読み取れます。

これは、短期的な消費刺激ではなく、
将来に向けた家計の安定を意識した設計です。


暗号資産課税は「緩和」ではなく「整理」

暗号資産の課税については、
「税負担が重すぎる」「分かりにくい」という声が以前からありました。

令和8年度改正では、
一部の暗号資産取引について、
分離課税の導入が整理されています。

これは、暗号資産を特別に優遇する改正ではありません。


分離課税が意味するもの

分離課税とは、
給与や事業所得と切り離して、
一定の税率で課税する仕組みです。

この整理により、

  • 課税関係が明確になる
  • 所得区分による過度な税率差を避ける

という効果が期待されます。

一方で、
すべての暗号資産取引が対象になるわけではなく、
事業性や継続性がある場合は従来どおりの扱い
となる点には注意が必要です。


暗号資産を巡る税制のメッセージ

暗号資産に関する改正から読み取れるのは、
「育成」でも「排除」でもありません。

税制としては、
一般的な金融取引として整理し、課税のルールを明確にする
という立場を取っています。


ふるさと納税は「制度疲労」への対応

ふるさと納税は、地方財源の確保を目的とした制度です。
一方で、返礼品競争や高額寄附の増加により、
制度本来の趣旨から乖離しているという指摘もありました。

令和8年度改正では、
特例控除額に上限を設ける調整が行われています。


上限設定が意味するもの

この改正は、
ふるさと納税そのものを否定するものではありません。

税制としては、

  • 制度の利用が一部の高所得層に偏らないようにする
  • 税負担の公平性を確保する

という観点から、歯止めをかけた形です。

一般的な範囲でふるさと納税を利用している人にとって、
実務上の影響は限定的と考えられます。


資産形成税制に共通する判断軸

NISA、暗号資産、ふるさと納税を並べて見ると、
税制の判断軸は一貫しています。

  • 長期的な資産形成は支援する
  • 短期的・過度な有利さは調整する
  • 制度の分かりにくさは整理する

令和8年度改正は、
資産形成を「勧める」段階から、
持続可能な形に整える段階へ入った
と位置づけることができます。


おわりに

第4回で見てきたように、
資産形成に関する税制改正は、
単なる優遇や引き締めではありません。

税制は、
どのような資産の持ち方・増やし方を社会として支持するのか
を、かなり明確に示しています。

次回は、高所得者・役員・オーナー層に関係する改正について、
「なぜそこが問題視されたのか」という視点から、
一般の人にも分かる形で整理します。


参考

・自由民主党「令和8年度税制改正大綱」
・金融庁「NISA制度に関する資料」
・財務省「暗号資産・寄附金税制に関する資料」


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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