改正下請法やフリーランス新法の施行により、フリーランスの取引環境は制度面では大きく前進しました。しかし、制度は自動的にフリーランスを守ってくれるものではありません。最終的に重要なのは、契約段階で何を確認し、どこまで整理できているかです。
本稿では、本シリーズの総仕上げとして、フリーランスが実務で必ず確認すべき契約チェックポイントを整理します。これは法的な網羅チェックではなく、価格転嫁・取引継続・トラブル予防の観点から見た「実務用チェックリスト」です。
チェック① 業務内容は具体的に定義されているか
契約書や発注書に記載された業務内容が、抽象的な表現にとどまっていないかを確認します。
「〇〇に関する業務一式」「必要に応じた対応」といった表現は、後から業務範囲が際限なく広がる原因になります。
成果物の内容、作業範囲、回数、修正対応の有無などが明確になっているかが重要です。
業務内容が曖昧な契約は、価格交渉ができない契約でもあります。
チェック② 報酬の算定根拠が説明できるか
報酬額が「なんとなく決まった金額」になっていないかを確認します。
時間単価、作業量、成果物単価など、どの考え方で金額が設定されているのかを自分自身が説明できる状態にしておくことが重要です。
これは相手に説明するためだけでなく、価格改定を検討する際の出発点になります。
チェック③ 支払期日・支払方法は明確か
支払期日が「納品後〇日」などと具体的に定められているか、支払方法が明確かを確認します。
期日までに現金化できない手形や、実質的に支払いが遅れる条件になっていないかも重要な確認ポイントです。
支払条件は価格と同じくらい重要な取引条件です。
チェック④ 契約期間と更新条件は把握しているか
契約が単発なのか、期間契約なのか、更新の有無や条件がどうなっているのかを確認します。
契約更新と価格交渉を同時に考えてしまうと、交渉が成立しにくくなります。
契約期間の区切りを把握しておくことで、価格協議のタイミングを戦略的に考えられます。
チェック⑤ 業務内容の変更時の扱いは決まっているか
業務内容が途中で変更・追加される場合の取り扱いが定められているかを確認します。
変更があった場合に、報酬の再協議を行う余地があるかどうかは、価格転嫁の実務に直結します。
「追加業務=無償対応」になっていないかが重要です。
チェック⑥ 再委託・外注の可否は明確か
業務の一部を外注・再委託できるかどうか、その条件が定められているかを確認します。
再委託が禁止されている場合、フリーランスがコスト上昇を吸収せざるを得ない構造になりやすくなります。
コスト管理の自由度という観点でも重要なポイントです。
チェック⑦ 協議・連絡の記録を残せる体制か
契約条件の変更や価格に関するやり取りを、記録として残せる手段があるかを確認します。
口頭のみのやり取りに依存していないか、メールや書面で確認できる環境かが重要です。
改正下請法の「協議を求めた事実」を活かすためにも、記録は不可欠です。
チェック⑧ 取引終了時の条件を把握しているか
契約解除や取引終了の条件がどうなっているかを確認します。
一方的な解除が可能になっていないか、突然の取引停止に備えた余地があるかを把握しておくことは、事業継続の観点から重要です。
チェック⑨ 自分はどの制度の射程にいるか
最後に、自分の取引が
・フリーランス新法の対象なのか
・改正下請法の対象になり得るのか
を整理しておきます。
これは契約書に書かれているものではなく、取引構造から判断する視点です。
制度を正しく認識しているかどうかで、交渉の選択肢は大きく変わります。
結論
フリーランスにとって、契約は単なる形式ではなく、価格転嫁や取引継続を左右する実務の土台です。
制度が整った今だからこそ、「契約をどう結んでいるか」が以前にも増して重要になっています。
チェックリストを埋めること自体が目的ではありません。
業務内容・報酬・支払条件・協議の余地を自分の言葉で説明できる状態をつくることが、本当の目的です。
本シリーズで見てきたように、
制度は「使える人」にしか力を発揮しません。
契約を見直すことは、フリーランスが主体的に取引に向き合うための第一歩です。
参考
・日本経済新聞「改正下請法きょう施行 政府、価格転嫁の監視強化」(2026年1月1日朝刊)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
