フリーランス新法では守れないリスク一覧――制度の限界を理解することが実務対応の第一歩

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フリーランス新法の施行により、フリーランスの取引環境は一定程度、制度的に整備されました。契約条件の明示や報酬支払期日の明確化など、最低限のルールが法律で定められた意義は大きいといえます。

しかし、フリーランス新法は万能の保護制度ではありません。実務の現場では、「法律があるのに困っている」「守られている実感がない」という声も少なくありません。それは、制度が意図的にカバーしていない領域が存在するからです。

本稿では、フリーランス新法では守れない主なリスクを整理し、どこから先は自己防衛や別制度で補う必要があるのかを明確にします。

リスク① 報酬水準の低さそのもの

フリーランス新法は、報酬額の水準が妥当かどうかを直接判断する制度ではありません。
契約内容と報酬が明示され、支払期日が守られていれば、報酬が低水準であっても直ちに違法とはなりません。

そのため、業務量や専門性に見合わない報酬設定であっても、「合意している」という形式があれば保護の対象外になります。
価格が適正かどうかという問題は、フリーランス新法の射程外にあります。

リスク② 価格協議の機会がない取引

フリーランス新法は、契約条件の明示を義務づけていますが、「条件を変更するための協議の機会」までは保障していません。

実務では、「この条件でできるなら発注する」「できなければ他を探す」といった一方的な提示が行われることがあります。
このような場合、条件が明示されている限り、フリーランス新法だけでは是正が難しいのが実情です。

価格交渉や条件変更の余地がない取引は、制度上も構造的に残されています。

リスク③ コスト上昇リスクの一方的な転嫁

原材料費、外注費、通信費、ソフトウェア利用料など、フリーランスを取り巻くコストは年々増加しています。しかし、フリーランス新法は、コスト上昇を理由とした価格改定を保障する制度ではありません。

契約期間中にコストが上がっても、再協議の義務は生じません。
結果として、コスト増をフリーランス側が一方的に吸収する構造は、フリーランス新法だけでは解消されません。

リスク④ 契約終了・更新拒否の自由

フリーランス新法は、契約条件の明示を求める一方で、契約を続ける義務までは課していません。

そのため、発注側が契約期間満了を理由に更新を拒否すること自体は、原則として問題になりません。
価格交渉を申し出た結果、次回から声がかからなくなる、といったリスクも制度上は残ります。

これは、フリーランスが事業者である以上、完全には避けられない構造的なリスクといえます。

リスク⑤ 発注量の急減・業務内容の変更

フリーランス新法は、契約で定められた業務内容や報酬の明示を求めていますが、発注量の変動そのものを制限する制度ではありません。

月ごとの発注量が大きく変動したり、実質的に業務内容が変わったりしても、形式的な契約条件が守られていれば、是正が難しい場合があります。

収入の不安定さというフリーランス特有の問題は、制度の外側に残っています。

リスク⑥ 精神的圧力や「空気」による不利益

「他にも候補はいる」「今回だけ特別に頼んでいる」といった言葉による圧力や、暗黙の上下関係は、法律で線引きしにくい領域です。

フリーランス新法は、明確な契約条件や行為を対象としており、こうした心理的・関係性の問題までは直接扱いません。
結果として、形式上は適法でも、実質的には不利な立場に置かれるケースが残ります。

リスク⑦ 小規模発注者との取引

フリーランス新法は、発注側が事業者であることを前提としていますが、発注者自身が小規模である場合、交渉力の非対称性が制度上十分に問題視されないことがあります。

発注側も余裕がないため、条件改善が現実的でない取引では、制度の効果は限定的になります。

結論

フリーランス新法は、フリーランスの取引環境を改善する重要な制度ですが、守れないリスクが数多く残されています。
特に、報酬水準、価格協議、コスト上昇、契約継続といった核心部分は、制度の外側にあります。

だからこそ、フリーランス新法を過信せず、
・改正下請法の適用可能性を検討する
・契約内容や交渉履歴を記録として残す
・取引先を分散し、依存度を下げる
といった実務的な対応が不可欠になります。

制度を知ることは守られるためではなく、リスクを見極めるための第一歩です。フリーランス新法の限界を理解することが、持続的な働き方につながります。

参考

・日本経済新聞「改正下請法きょう施行 政府、価格転嫁の監視強化」(2026年1月1日朝刊)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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