改正下請法への実務対応――受注側(フリーランス・中小企業)は何を準備すべきか

副業
ブルー ピンク イラスト メリットデメリット 比較 記事見出し ブログアイキャッチ - 1

2026年1月1日に施行された改正下請法(中小受託取引適正化法)は、価格転嫁を巡るルールを大きく転換しました。特に注目されるのは、受注側からの協議要請を無視し、発注側が一方的に取引価格を決める行為が明確に禁止された点です。

もっとも、法律ができたからといって、自動的に取引条件が改善されるわけではありません。受注側自身が制度を理解し、実務に落とし込めなければ、改正の効果は限定的なものにとどまります。本稿では、フリーランスや中小企業の立場から、改正法を踏まえた実務対応のポイントを整理します。

改正法は「値上げを保証する制度」ではない

まず押さえておくべき点は、改正法が価格引き上げを義務づける制度ではないということです。法律が禁止したのは、協議の求めに応じない姿勢や、一方的な価格決定です。

つまり、受注側にとって重要なのは、「協議の土俵に上がれる権利」をどう使うかです。値上げの正当性を説明できなければ、形式的に協議が行われても、結果は変わらない可能性があります。

価格交渉に備える基本資料の整備

協議の場で求められるのは感情論ではなく、根拠です。受注側が準備しておくべき基本資料は、大きく三つに分けられます。

一つ目は、コスト構造の把握です。材料費、外注費、人件費、間接費など、自社の原価構成を整理し、どの部分がどれだけ上昇しているのかを説明できる状態にしておく必要があります。

二つ目は、外部環境の変化を示す資料です。原材料価格や最低賃金の上昇、業界全体のコスト動向など、客観的な情報は交渉の説得力を高めます。

三つ目は、過去との比較です。契約開始時点と現在のコスト差を示すことで、「なぜ今、協議が必要なのか」を明確にできます。

「協議の求め」は書面で残す

改正法では、協議の求めに応じない行為が問題とされます。裏を返せば、「協議を求めた事実」を客観的に残しておくことが重要になります。

口頭でのお願いだけでは、後から確認が難しくなります。メールや書面で、コスト上昇を理由に協議を求めた経緯を残しておくことで、制度の実効性が高まります。

これはトラブルを前提にした行動ではなく、あくまで正当な手続きを踏むための備えと考えるべきでしょう。

支払条件の見直しと資金繰り管理

改正法では、期日までに現金化できない手形での支払いが禁止されました。受注側にとっては、価格だけでなく支払条件にも目を向ける好機です。

契約書や発注書を確認し、支払期日や支払方法が適切かを再点検することが重要です。特にフリーランスや小規模事業者にとって、資金繰りは事業継続に直結します。
価格転嫁の協議と併せて、支払条件の改善も視野に入れるべきでしょう。

フリーランスが注意すべき点

フリーランスの場合、取引関係が個別・非定型になりやすく、「自分は対象外ではないか」と感じるケースも少なくありません。しかし、改正法は情報成果物作成委託など、フリーランスに関係の深い取引も対象としています。

重要なのは、発注側の規模と自分の立場を正しく把握することです。取引条件が一方的に決められている場合でも、制度を知っているかどうかで交渉の余地は変わります。

また、契約書を交わさない慣行が残っている分野ほど、条件の明確化が重要になります。改正法をきっかけに、契約内容を文書で確認する姿勢が求められます。

「守られる側」から「説明できる側」へ

改正下請法は、受注側を一方的に保護する制度ではありません。むしろ、対等な取引関係を前提に、「説明できる受注側」を求める制度ともいえます。

価格交渉に必要な資料を整え、協議を求める手続きを理解し、支払条件や契約内容を確認する。これらは、法改正がなくても本来必要な実務です。
改正法は、その重要性を改めて浮き彫りにしたといえるでしょう。

結論

改正下請法の施行は、受注側にとって追い風である一方、準備不足のままでは効果を実感しにくい制度でもあります。協議を求める権利を活かすためには、日頃からの実務整理が不可欠です。

価格転嫁は、単なる値上げ交渉ではありません。自社のコストと価値を見える形にし、対話を通じて取引条件を再構築するプロセスです。
今回の改正をきっかけに、受注側自身が取引の主体として一歩踏み出すことが求められています。

参考

・日本経済新聞「改正下請法きょう施行 政府、価格転嫁の監視強化」(2026年1月1日朝刊)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

タイトルとURLをコピーしました