2026年通常国会では、外国人規制や家族法制、国家安全保障に関わる法案など、いわゆる「保守色」の強い政策が前面に出てきます。これらは政策論争であると同時に、次の衆議院選挙を見据えた政治戦略でもあります。
高市政権は、こうした政策を通じて支持層をどこまで固められるのか。一方で、失われる支持はどの程度になるのか。本稿では、保守色政策が選挙に与える影響を、支持層構造と分断という観点から整理します。
「岩盤支持層」を動かす政策
保守色政策の最大の狙いは、いわゆる「岩盤支持層」の再結集です。
外国人の土地取得規制、国家情報機関の創設、国旗や国章を巡る法整備などは、安全保障や国家観に強い関心を持つ層に訴求力があります。
この層は、投票行動が比較的安定しており、投票率も高い傾向があります。選挙においては、確実に票を積み上げられる存在です。
高市政権がこれらの政策を通常国会で成立させようとする背景には、「確実に動く票」を意識した計算があると考えられます。
特に、連立相手が維新となったことで、安全保障や統治機構改革を前に進めやすくなった点は、保守層にとって好材料です。
旧姓通称使用を巡る攻防
一方で、家族法制を巡る議論は、支持の結集と同時に分断を生みやすいテーマです。
夫婦同姓を維持したまま、旧姓の通称使用に法的効力を持たせる案は、保守層への配慮と現実対応を両立させようとする折衷案です。
しかし、この折衷案は、どちらの側からも不満が出やすい構造を持っています。
選択的夫婦別姓を求める層からは「本質的な解決になっていない」と批判され、伝統的家族観を重視する層からは「実質的な制度変更ではないか」と警戒されます。
結果として、支持の純増につながりにくく、論争だけが激化するリスクを抱えています。選挙戦においては、争点が複雑化し、有権者の理解が追いつかない可能性もあります。
分断が生む「静かな離反」
保守色政策がもたらす最大のリスクは、目立った反対よりも「静かな離反」です。
とりわけ都市部の無党派層や若年層では、価値観に踏み込む政策に対して距離を置く傾向が見られます。
これらの層は、強く反対の声を上げるわけではありませんが、投票行動で与党から離れる可能性があります。
低投票率の選挙では、この静かな離反が結果を左右することがあります。
保守色政策は、支持層を固める効果と同時に、支持の裾野を狭める作用を持つ点を無視できません。
経済政策との組み合わせが鍵
重要なのは、保守色政策単独では選挙を戦えないという点です。
価値観に関わる政策は、有権者の感情を動かしますが、生活実感を直接改善するものではありません。
そのため、減税や物価高対策、賃上げといった経済政策とどのように組み合わせるかが、選挙戦略上の分かれ目となります。
経済面での成果が実感できる状況であれば、価値観政策への反発は相対的に和らぎます。
逆に、物価高や金利上昇への不満が強い中で保守色政策を前面に出せば、「優先順位を誤っている」という評価につながりかねません。
首相のリーダーシップと選択
高市早苗首相は、年頭所感で「変化をおそれず、必要な改革を断行する」と述べました。
この言葉は、支持層にとっては力強いメッセージですが、同時に分断を引き受ける覚悟を意味します。
保守色政策を進めることは、支持層の明確化と引き換えに、幅広い合意形成を難しくする選択でもあります。
解散・総選挙に踏み切る場合、その是非が直接、選挙結果として突きつけられます。
結論
保守色政策は、選挙において確実な支持を固める一方で、分断というコストを伴います。
2026年の衆院選が近づくにつれ、このトレードオフはより鮮明になるでしょう。
高市政権が目指すのは、価値観を軸にした明確な政治か、それとも経済実績を前面に出した幅広い支持の獲得か。
保守色政策の扱い方は、解散の成否だけでなく、政権の行方そのものを左右する要素となります。
参考
・日本経済新聞「『保守色』法案で与野党対立 通常国会 外国人規制や旧姓使用」
・日本経済新聞「探る解散時期、4シナリオ 支持率・市場動向で見極め」
・日本経済新聞「日本に希望生み出す 首相が年頭所感」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
