ガソリン税「旧暫定税率」廃止が意味するもの――減税の裏側で先送りされる財源問題――

FP

2025年12月31日、ガソリン税に上乗せされてきた「旧暫定税率」が廃止されました。1リットルあたり25.1円という負担がなくなることで、家計や事業者にとっては歓迎すべき減税です。一方で、国と地方を合わせて年間約1.5兆円の税収減が生じるとされ、代替財源の確保は先送りされたままです。
本稿では、旧暫定税率の経緯を整理したうえで、今回の廃止が財政や今後の税制にどのような影響を与えるのかを考えます。

旧暫定税率とは何だったのか

ガソリン税の旧暫定税率は、1974年に道路整備の財源として導入されました。当時は高度経済成長期であり、急増する自動車交通に対応するため、道路インフラ整備が国家的課題とされていました。

その後、2009年に道路特定財源制度は廃止され、ガソリン税は一般財源化されました。しかし、「暫定」とされていた税率そのものは維持され、結果として高い税率だけが残る形となりました。この点については、長年にわたり「目的を失った暫定税率ではないか」という批判が続いてきました。

今回の廃止の内容と時期

今回の制度改正では、ガソリンに上乗せされてきた1リットルあたり25.1円の旧暫定税率が2025年12月31日をもって廃止されました。
また、軽油にかかる旧暫定税率(1リットルあたり17.1円)についても、2026年4月1日に廃止される予定です。

これにより、ガソリン・軽油を合わせた税収減は、国と地方で年間およそ1.5兆円にのぼると見込まれています。減税効果は即効性があり、物流コストや物価への一定の抑制効果が期待されています。

財源問題が残した課題

最大の問題は、減収分をどう補うのかという点です。2026年度の税制改正大綱では、この点について「2027年度税制改正において結論を得る」とされ、実質的に議論は先送りされました。

すでに社会保障関係費は高齢化により拡大を続けており、地方財政も決して余裕がある状況ではありません。1.5兆円規模の恒久的な減収は、将来的に以下のような形で影響が及ぶ可能性があります。

  • 他の税目による穴埋め(消費税・環境関連税など)
  • 社会保障給付や公共サービスの抑制
  • 地方交付税や地方税体系の見直し

減税だけを切り出せば「負担軽減」ですが、財源の議論を避けたままでは、別の形で国民負担が生じる可能性があります。

環境政策との関係

もう一つ見逃せないのが、環境政策との関係です。燃料課税は、CO₂排出抑制という観点からは「価格を通じた行動変容」を促す手段でもありました。旧暫定税率はその目的で導入されたものではありませんが、結果として燃料価格を高く保つ役割を果たしてきた面があります。

今後、カーボンプライシングや環境税の議論が本格化すれば、ガソリン税減税と別の形の負担増が同時に進む可能性も否定できません。

結論

ガソリン税の旧暫定税率廃止は、長年の懸案に一つの区切りをつけるものであり、家計や事業者にとっては短期的なメリットがあります。しかし、その裏側では年間1.5兆円規模の恒久的な財源問題が残されました。

減税は目的ではなく手段にすぎません。今後は、どの税で、どの世代が、どのように負担するのかという議論を避けずに進めることが求められます。旧暫定税率の廃止は、税制全体の持続可能性を改めて問い直すきっかけでもあるといえるでしょう。

参考

・日本経済新聞
「ガソリン税の旧暫定税率、きょう廃止 代替財源確保は途上」
2025年12月31日 朝刊


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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