新NISA2年目の実像― インフレ時代の資産形成はどこへ向かうのか ―

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2024年に始まった新しいNISA制度は、開始からまもなく2年目を迎えました。日本経済新聞によると、2025年のNISA口座を通じた個人投資家の購入額は約12兆6,000億円と、前年より7%増加しています。
3%前後のインフレが定着しつつあるなかで、預貯金だけでは資産価値を守れないという意識が広がり、個人の資産形成行動に変化が生じています。本稿では、2年目を迎えた新NISAの利用実態を整理し、そこから見えてくる課題と今後の方向性について考えます。


新NISAの制度設計と2年目の特徴

新NISAは、成長投資枠とつみたて投資枠の2本立てで構成され、年間投資上限額は合計360万円です。非課税期間に制限がなく、長期の資産形成を前提とした制度設計が大きな特徴です。
従来制度と比べると、制度が簡素化され、非課税枠も大幅に拡充されました。その結果、投資経験の浅い層だけでなく、一定の資産を保有する層にも利用が広がっています。

2年目となる2025年は、制度の「定着」が進んだ年といえます。初年度の様子見姿勢から一歩進み、継続的な積立や投資枠の使い切りを意識する動きが目立つようになりました。


投資信託が中心となる資金流入

購入金額の内訳を見ると、投資信託が全体の約6割を占めています。特に低コストのインデックス型投資信託に資金が集中している点が特徴的です。
全世界株式や米国株式に連動する投資信託が上位を占め、個別国や銘柄を選別するよりも、分散投資による長期保有を志向する投資家が多いことがうかがえます。

この傾向は、投資を「短期の値上がり益」ではなく、「生活設計の一部」として捉える意識の広がりを示しています。制度の趣旨である長期・積立・分散が、一定程度浸透してきたと評価できます。


米国株人気が続く背景

2025年は、日本株や欧州株のパフォーマンスが相対的に堅調でしたが、NISAを通じた投資先としては米国株の人気が引き続き高水準でした。
背景には、米国企業の成長力やイノベーションへの期待に加え、円安の長期化があります。為替ヘッジを行わない投資信託では、円安が進むほど円ベースの評価額が押し上げられるため、結果としてリターンが改善する局面もありました。

インフレと円安が同時に進行する環境では、円建ての現預金だけで資産を保有することに対する不安が高まりやすくなります。その代替として、海外資産を組み入れる動きが強まっていると考えられます。


国内個別株は「安定志向」が中心

一方、国内個別株の購入額は前年比で横ばいとなりました。割合としては全体の3割強を占めていますが、成長期待よりも安定性や配当を重視する傾向がみられます。
通信、金融、自動車など、長期保有を前提とした高配当銘柄への投資が中心であり、NISA口座を「インカムゲインを非課税で受け取る手段」として活用する投資家も少なくありません。

これは、投資信託による分散投資と、国内高配当株による安定収入を組み合わせるという、比較的保守的なポートフォリオ構成が好まれていることを示しています。


インフレ時代の資産形成と新NISAの役割

新NISAの拡大を支えている最大の要因は、インフレの定着です。物価が上昇する局面では、現金の実質価値は低下します。
この環境下で資産を守り、将来に備える手段として、投資を避けて通れないという認識が広がっています。

ただし、制度が整ったからといって、自動的に資産形成がうまくいくわけではありません。投資対象の理解、リスク許容度の把握、ライフプランとの整合性といった点は、引き続き重要な課題です。


今後の課題:「貯蓄から投資」をどう定着させるか

2年目を迎えた新NISAは、量的には順調に拡大していますが、「使っている人」と「使っていない人」の差が広がりつつあります。
今後の課題は、制度を利用していない層に対して、投資の必要性や制度の位置づけをどう伝えていくかにあります。

特に、老後資金や教育資金など、目的別に資産形成を考える視点を広めることが重要です。単なる投資ブームに終わらせず、生活設計の一部として新NISAをどう組み込むかが問われています。


結論

新NISAは2年目に入り、インフレ時代の資産形成手段として着実に定着しつつあります。投資信託を中心とした長期・分散志向は、制度の趣旨に沿った動きといえます。
一方で、制度を使いこなせていない層も依然として多く、今後は「量」から「質」への転換が求められます。新NISAを単なる非課税制度としてではなく、人生設計を支える仕組みとしてどう活用するかが、これからの大きなテーマとなるでしょう。


参考

・日本経済新聞「新NISA、2年目は7%増の12兆円 資産形成、インフレで拡大」(2025年12月30日朝刊)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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