確定申告で迷わないための個人国際税務入門 第3回 年の途中で入国・出国した場合の居住区分と確定申告実務

税理士
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海外赴任や帰任、外国人の入国・出国などにより、年の途中で居住形態が変わるケースは少なくありません。
この場合、単純に「その年は居住者」「その年は非居住者」と一括りにしてしまうと、課税関係を誤る原因になります。

年途中での入出国がある場合、期間ごとに居住区分を分けて考えることが、国際税務では基本となります。


年の途中で居住区分が変わるとはどういうことか

所得税法上の居住区分は、原則として事実に基づいて判定されます。
そのため、年の途中で次のような変化があれば、居住区分も途中で切り替わります。

  • 日本に入国し、居住者となった
  • 日本から出国し、非居住者となった

1年を通じて同一の区分になるとは限らない点が、実務上の重要ポイントです。


入国した場合の居住者判定の考え方

外国人が日本に入国した場合、居住者となるかどうかは、「住所」または「1年以上の居所」の有無で判断されます。

実務では、次のようなケースが典型です。

  • 2~3年の予定で日本に派遣された外国人社員
  • 契約上、1年以上日本で勤務することが予定されている場合

このような場合は、入国時から居住者と推定されることになります。
暦年途中で入国していても、入国日以後は居住者として取り扱われます。


出国した場合の非居住者判定

日本から出国した場合も、同様に事実関係をもとに判定します。

  • 海外で1年以上勤務することが予定されている
  • 帯同家族も含めて国外に生活の拠点を移している

このような場合には、出国時から非居住者と推定されます。
出国後に日本で得た所得があるかどうかで、課税関係が大きく変わります。


年途中で区分が変わる場合の所得の考え方

年の途中で居住区分が変わる場合、所得は区分ごとに整理します。

  • 居住者期間中の所得
  • 非居住者期間中の所得

たとえば、出国前に支給された給与は居住者としての課税関係、
出国後に支給された給与は、非居住者としての課税関係が問題になります。

「いつ支給されたか」「どの期間に対応するか」を丁寧に確認する必要があります。


給与所得に関する実務上の注意点

年途中で出国・帰国した場合、給与については次の点に注意が必要です。

  • 出国時・入国時の源泉徴収の取扱い
  • 海外勤務期間に対応する給与の扱い
  • 日本法人・外国法人のいずれが支払っているか

特に、日本にいない期間の給与だから非課税と短絡的に判断するのは危険です。
源泉や支払方法によっては、日本で課税関係が生じることもあります。


準確定申告(いわゆる172条申告)との関係

出国により非居住者となった場合、一定の所得については、出国時までに準確定申告を行う必要があります。

これは、居住者であった期間の所得について、
非居住者になる前に課税関係を確定させるための制度です。

年末まで待って通常の確定申告を行うわけではない点に注意が必要です。


実務で起こりやすい誤り

年途中の入出国に関して、次のような誤りがよく見られます。

  • 1年分を一括して居住者として申告している
  • 非居住者期間中の所得まで合算している
  • 準確定申告が必要であることを失念している

これらはいずれも、居住区分を期間で分けて考えていないことが原因です。


結論

年の途中で入国・出国がある場合、国際税務では
**「いつから、どの区分に該当するのか」**を時系列で整理することが不可欠です。

1年を一括で処理するのではなく、
居住者期間と非居住者期間を切り分けて考えることで、課税関係は整理しやすくなります。

次回は、海外給与や株式報酬(ストックオプション等)の課税関係と申告実務について解説します。


参考

  • 東京税理士協同組合教育情報事業
    「全国統一研修会 令和7年分確定申告に向けて 個人の国際税務」研修資料

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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