海外勤務や外国人社員の増加、海外投資の一般化により、個人の確定申告において「国際税務」が関係する場面は確実に増えています。
その一方で、実務上もっとも多い誤りは、所得の計算以前に居住区分の判定を誤っていることです。
個人の国際税務では、まず「どの区分に該当するか」を正しく整理しなければ、その後の課税関係はすべてずれてしまいます。
所得税法上の個人の区分
所得税法では、個人を次の3つに区分しています。
- 非永住者以外の居住者
- 非永住者
- 非居住者
この区分ごとに、課税される所得の範囲が根本的に異なります。
「住所」と「居所」の考え方
居住者か非居住者かの判定は、「住所」または「居所」が国内にあるかどうかで判断されます。
- 住所:生活の本拠
- 居所:一定期間継続して居住しているが、生活の本拠とまではいえない場所
滞在日数だけで自動的に決まるものではなく、
住居、職業、家族の居所、資産の所在などを総合的に見て判断されます。
非永住者という特殊な区分
非永住者は、居住者の中でも特殊な位置づけです。
- 日本国籍を有していない
- 過去10年以内の国内居住期間が5年以下
という要件を満たす場合に該当します。
非永住者は居住者でありながら、課税対象が一部限定される点が大きな特徴です。
居住区分ごとの課税所得の範囲
課税される所得の範囲は次のとおり整理されます。
- 非永住者以外の居住者:すべての所得
- 非永住者:
- 国外源泉所得以外の所得
- 国外源泉所得のうち国内払い分
- 国外から送金された国外源泉所得
- 非居住者:国内源泉所得のみ
ここを誤ると、「申告不要と思っていた所得が実は課税対象だった」という事態につながります。
判定を誤りやすい実務場面
実務では次のような場面で誤りが起こりがちです。
- 海外勤務者の一時帰国
- 年の途中での入国・出国
- 海外投資収益があるが送金していない場合
これらはすべて、居住区分の正確な整理が前提となります。
結論
個人の国際税務では、所得の種類や金額よりも前に、
居住者・非永住者・非居住者の区分を正しく押さえることが最重要です。
次回は、特に誤解が多い「非永住者の課税関係」と送金課税の考え方について、実務視点で整理します。
参考
- 東京税理士協同組合教育情報事業
「全国統一研修会 令和7年分確定申告に向けて 個人の国際税務」研修資料
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
