東京一極集中と税収偏在是正論──国益とは何か、地方自治とは何か

FP
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東京一極集中を巡る議論は、長年、日本の政策課題として繰り返されてきました。2026年度税制改正大綱では、法人事業税等を通じた税収偏在是正策が改めて盛り込まれ、国から地方への再分配を強化する方向性が示されています。
こうした中、東京都知事が日本経済新聞のインタビューで、偏在是正策を国益を損じるものと強く批判しました。本稿では、この発言を手がかりに、税収偏在是正の是非、東京の成長と国全体の成長の関係、そして地方自治のあり方について整理します。

税収偏在是正策への批判

東京都知事は、いわゆる税収偏在是正策について、東京のパイを切り分けて縮小させても効果は出ないと指摘しました。東京の経済力を削ぐことで地方が活性化するという単純な構図にはならず、結果として日本全体の成長力を弱めかねないという問題意識です。
背景には、東京が国内外から人材、資本、情報を集めることで日本経済のエンジンとして機能してきたという認識があります。東京の税収は、企業活動や雇用の集積によって生み出された成果であり、それを制度的に削り取ることが本当に国益にかなうのかという問いが投げかけられています。

地方自治の本来の姿

知事は、地方自治の根幹が問われているとも述べています。本来、地方自治とは、それぞれの地域が独自の戦略と責任のもとで発展を目指す仕組みです。
国が税制を通じて強制的に再分配を行うことは、地方の自立を促すどころか、依存体質を固定化させる恐れもあります。地方が自らの強みを磨き、人口や産業を呼び込む努力を重ねることこそが、日本全体を底上げする道だという考え方です。

人口政策と東京の役割

インタビューでは、人口こそが社会の基盤であるとの認識も示されました。東京都は、チルドレンファーストを掲げ、子育て支援や若年層支援を強化してきました。その結果、出生数や婚姻数が改善の兆しを見せているとされています。
人口減少が全国共通の課題となる中で、都市部が先行して成果を上げることは、他地域にとっても政策の参考事例となります。東京の取り組みを成功例として横展開するという発想も、地方自治の一つの形といえるでしょう。

外国人政策と共生社会

外国人政策については、伝える努力の重要性が強調されました。多言語での情報発信や、やさしい日本語による啓発を通じて、文化やルールの違いによる摩擦を減らす姿勢です。
これは東京だけの課題ではなく、今後、外国人労働者や居住者が増える地方都市にも共通する論点です。秩序ある共生社会を実現するためには、制度設計だけでなく、丁寧なコミュニケーションが不可欠であることを示しています。

副首都構想と首都の責務

副首都構想について、東京都は首都としての責務を果たすことに集中する姿勢を示しています。首都直下地震への備えなど、危機対応力を高めることは、日本全体の安全保障にも直結します。
首都機能の分散を議論するにしても、まずは現実的なリスク評価と対策が前提となります。東京の脆弱性を正確に把握し、備えを強化することが、結果として国全体のリスクを下げることにつながります。

結論

税収偏在是正を巡る議論は、単なる財源配分の問題ではありません。国益とは何か、地方自治とは何か、そして人口減少社会においてどのように成長を描くのかという、根本的な問いを含んでいます。
東京の成長を抑えることで地方を支えるのか、それとも各地域が自立的に競い合い、全体として底上げを図るのか。今回のインタビューは、後者の道を改めて提示したものといえるでしょう。税制改正を評価する際には、短期的な再分配効果だけでなく、中長期的な成長戦略との整合性を冷静に見極める視点が求められます。

参考

日本経済新聞
攻防 東京一極集中(下) 税収偏在是正 国益損じる
2025年12月27日 朝刊


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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