住宅ローン控除が変わる 狭い中古住宅も選択肢になる時代へ

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2026年度税制改正大綱では、所得税の基礎控除の引き上げなどと並び、住宅ローン控除の見直しが大きな注目を集めています。今回の改正の特徴は、新築偏重だった制度設計を改め、省エネ性能の高い中古住宅にも新築並みの税優遇を与える方向へと舵を切った点にあります。
特に、床面積40平方メートル以上50平方メートル未満の中古住宅が新たに控除対象となることは、都市部を中心とした住宅選択に少なからぬ影響を与えそうです。

住宅ローン控除の基本構造

住宅ローン控除は、住宅取得等のために借り入れたローンの年末残高の0.7%を、所得税および住民税から一定期間控除する制度です。
借入限度額や控除期間は、住宅の性能区分や家族構成などによって異なります。現行制度では、新築の認定長期優良住宅など高性能住宅については、一般世帯で4,500万円、子育て世帯や若者夫婦世帯では5,000万円まで借入限度額が引き上げられ、控除期間も13年間とされています。

一方、中古住宅については制度上の扱いが厳しく、高性能住宅であっても借入限度額は3,000万円、控除期間は10年間にとどまっていました。加えて、床面積要件も原則50平方メートル以上とされ、新築との間に明確な差が設けられていました。

改正大綱が示した「中古重視」の方向性

今回の税制改正大綱では、この新築と中古の格差を縮める見直しが行われています。
まず、中古住宅であっても、省エネ性能の高い認定長期優良住宅などについては、借入限度額が3,500万円に引き上げられ、控除期間も新築と同じ13年間に延長されます。
さらに、これまで中古住宅には適用されていなかった子育て世帯・若者世帯への上乗せ措置が新設され、条件を満たせば借入限度額がさらに1,000万円増える仕組みとなります。

この改正により、税制面では「新築でなければ不利」という構造が大きく緩和されることになります。

床面積40平方メートル要件の意味

もう一つの大きな変更点が、床面積要件の緩和です。
合計所得金額が1,000万円以下であれば、中古住宅でも床面積40平方メートル以上から住宅ローン控除の対象となります。
これは、都市部で増えている単身世帯や子どものいない夫婦世帯の住宅実態を強く意識した改正といえます。

ただし注意点もあります。
40平方メートル以上50平方メートル未満の中古住宅については、「床面積特例」と「子育て世帯等の借入限度額上乗せ特例」を同時に適用することはできません。どちらか一方を選択する必要があり、家族構成や借入額を踏まえた慎重な判断が求められます。

減税効果はどの程度か

今回の改正によって新たに控除対象となるケースでは、減税効果も無視できません。
例えば、床面積45平方メートルの中古住宅について、3,000万円を35年返済・金利1%で借り入れた場合、13年間の住宅ローン控除額の合計は約230万円と試算されています。
これまで控除の対象外だった物件でも、数百万円規模の税負担軽減が見込める点は、購入判断に大きく影響するでしょう。

住宅ローン控除は「一生に一度」ではなくなる

改正後の制度を前提にすると、住宅ローン控除を人生で二度利用するケースも現実味を帯びてきます。
例えば、20代後半の独身期に40平方メートル台の中古マンションを取得し、その後、家族構成の変化に合わせてより広い住宅へ住み替えるといった選択です。
同時に二つの住宅ローン控除を受けることはできませんが、ライフステージに応じた住み替えを制度が後押しする形になります。

制度が拾いきれない層への課題

一方で、すべてのニーズを十分に満たしているとは言い切れません。
都市部では、中古であっても40平方メートル台の物件が1億円を超えることも珍しくなく、所得要件1,000万円以下という線引きに不満の声もあります。
「広さより立地を重視したい単身世帯」という現実を考えると、制度設計と市場価格との間にギャップが残っている点は今後の課題といえるでしょう。

結論

今回の住宅ローン控除の改正は、「新築中心」から「住宅ストック活用」へと政策の軸足が移りつつあることを明確に示しています。
省エネ性能を重視しつつ、中古住宅やコンパクトな住まいを選びやすくすることで、多様なライフスタイルに対応する狙いが読み取れます。
もっとも、適用要件や特例の選択には細かな判断が必要であり、購入前の制度確認はこれまで以上に重要になります。住宅取得を検討する際には、物件価格だけでなく、税制を含めた総合的な資金計画を立てることが欠かせません。


参考

・日本経済新聞「住宅ローン控除、狭い中古も 新築並み、40平方メートルから」
・2026年度税制改正大綱(住宅ローン控除関係部分)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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