2025年の商品相場は、世界経済の先行き不安を色濃く映す一年となりました。主要100品目の価格動向を見ると、値上がり・値下がりがほぼ拮抗し、全体としては「軟化傾向」が鮮明になっています。
背景にあるのは、米国の関税政策を起点とする世界経済減速への懸念、地政学リスク、そして国内外の供給制約です。本稿では、2025年の商品相場の特徴を整理したうえで、2026年を見通す際の視点を考えていきます。
価格下落が広がった2025年の特徴
2025年末時点で、価格が下落した商品は全体の3割を超えました。前年は2割程度であったことを踏まえると、下落品目が明確に増えた一年だったといえます。
特に目立ったのは、原油や化学品といった産業資材分野です。アジア市場における需要減速観測に加え、産油国の増産による供給過剰懸念が重なり、原油価格は下押し圧力を受けました。
原油安は、ガソリンや石油化学原料といった派生商品にも波及します。国内では補助金政策の影響もあり、年後半にかけて価格が一段と低下しました。
また、基礎化学品や合成ゴム、天然ゴムといった分野でも、自動車生産の鈍化懸念や中国経済の減速が重荷となり、相場は総じて軟調でした。
内需停滞を映す鉄鋼相場
国内需要の弱さを象徴したのが鉄鋼製品です。とりわけ建設向け鋼材では、人手不足による工事停滞が直撃しました。
需要が伸び悩むなか、限られた受注を巡る価格競争が激化し、問屋や商社は安値販売を余儀なくされました。鉄鋼相場の下落は、単なる原材料問題ではなく、日本の内需構造そのものを映し出しているといえます。
上昇が目立った貴金属と半導体
一方で、すべての商品が軟調だったわけではありません。上昇品目で目立ったのは貴金属です。
世界経済の混乱や地政学リスクの高まりを背景に、安全資産としての金への資金流入が続きました。金価格の高水準が意識されると、銀や白金、パラジウムといった他の貴金属にも資金が波及しています。
さらに、2025年の上昇率首位となったのが半導体メモリーのDRAMです。
AI向け製品への生産シフトにより、従来型製品の供給が絞られ、需給バランスが急速に逼迫しました。これは、技術革新が商品相場を大きく動かす典型例といえます。
構造変化が価格を動かす商品も
銅や畜産物の動きも、2025年を象徴しています。
銅は供給懸念に加え、AIや電気自動車向け需要の拡大期待が相場を押し上げました。原料価格の上昇は、スクラップなど関連市場にも波及しています。
また、豚肉価格は猛暑による生産効率低下を背景に高値圏で推移しました。気候変動が商品相場に与える影響が、より無視できなくなっている点も見逃せません。
2026年を見通す視点
2025年の商品相場を振り返ると、「世界の不安」と「供給制約」が複雑に絡み合って価格を動かしていることがわかります。
米国の通商政策、地政学リスク、AIや脱炭素といった構造変化は、2026年も引き続き相場の変動要因となるでしょう。
重要なのは、商品価格の上下を単なる短期的な値動きとして見るのではなく、その背後にある経済構造や政策の変化を読み取ることです。商品相場は、世界経済の先行指標として、今後も多くの示唆を与えてくれるはずです。
おわりに
2025年の商品相場は、均衡と分断が同時に進んだ一年でした。
軟調な商品が増える一方で、構造的な需要を背景に上昇する商品も存在します。2026年に向けては、こうした「分かれ道」に立つ相場環境をどう読み解くかが問われています。
参考
・日本経済新聞「世界の不安、商品相場揺らす 主要100品目騰落率」(2025年12月27日朝刊)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

