貴金属が示した「分散投資」の現在地――2025年の運用成績から考える資産配分の再点検

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2025年のマーケットを振り返ると、資産別の運用成績において際立った存在となったのが貴金属です。金に加え、銀やプラチナが大幅に上昇し、円建てベースでは株式や暗号資産を上回る成績を残しました。一方で、これまで高いリターンを誇ってきた米国株は相対的に見劣りし、欧州株や新興国株が存在感を高めています。
本稿では、2025年の運用成績を振り返りながら、なぜ貴金属や地域分散が注目されたのか、そして2026年に向けて個人投資家が考えるべき投資戦略の視点を整理します。

2025年、資産別騰落率が示した明確な変化

2025年の円建て資産別騰落率を見ると、貴金属の上昇率は群を抜いています。金は前年末比で約7割上昇し、銀やプラチナは年初来で2倍を超える水準まで買われました。
この背景には、世界経済の不確実性や地政学リスクの高まりがあります。特に春先に起きた関税政策を巡る混乱をきっかけに、株式市場の先行きに警戒感が広がり、相対的に「安全資産」とみなされる金へ資金が流入しました。

銀やプラチナについては、金と比べて市場規模が小さいことが価格変動を増幅させました。金に対する割安感が意識された局面で資金が集中し、結果として上昇率が大きくなった点には注意が必要です。

米国株一強からの変化

株式市場に目を向けると、2024年まで続いてきた米国株一強の構図に変化が見られました。
全世界株式指数は堅調に上昇したものの、国・地域別では欧州株や日本株、新興国株のパフォーマンスが米国株を上回っています。特に欧州株は30%を超える上昇率となり、米国株との差が意識されました。

この背景には、米国の政策運営に対する不透明感や、通貨ドルへの信認低下への懸念があります。米国に集中していた投資マネーが、相対的に割安感のある地域へ分散したことが、地域別株価指数の差として表れました。

新興国株と通貨の影響

新興国株も2025年は存在感を示しました。各国で利下げ政策が進み、企業業績への期待が高まったことが指数を押し上げています。
また、円安の進行も円建てベースでのリターンを押し上げる要因となりました。ドルに対しては大きな変動がなかったものの、ユーロや英ポンドに対して円安が進んだことで、欧州資産の評価額が大きく増加しています。

一方で、すべての通貨が円安方向に動いたわけではありません。新興国通貨の中には円に対して下落したものもあり、為替の影響を含めた分散の重要性が改めて浮き彫りになりました。

暗号資産の失速が示すリスク

2024年に大きく上昇した暗号資産は、2025年には調整局面を迎えました。代表的な暗号資産であるビットコインは年初来で下落し、価格変動の大きさが改めて意識される結果となっています。
値動きの大きい資産は短期的なリターンを狙える一方で、ポートフォリオ全体の安定性を損なうリスクもあります。2025年の結果は、単一テーマへの集中投資の危うさを示した一年だったと言えるでしょう。

2026年に向けた投資戦略の視点

2026年を展望すると、「分散投資」という基本原則の重要性は一段と高まると考えられます。
特定の国、特定の資産クラスに偏るのではなく、株式・債券・貴金属・地域といった複数の軸でバランスを取ることが、結果としてリスクを抑えた運用につながります。

貴金属は通貨価値の下落やインフレ、地政学リスクへの備えとして一定の役割を果たしますが、価格変動が大きい点には留意が必要です。特に銀やプラチナは金以上に値動きが荒くなる可能性があるため、組み入れ比率の管理が欠かせません。

結論

2025年の運用成績は、投資の世界において「何に投資するか」だけでなく、「どのように分散するか」が成果を左右することを改めて示しました。
貴金属の急騰、地域別株式の明暗、暗号資産の調整――これらはいずれも、単線的な見方では捉えきれない市場の複雑さを映しています。
2026年に向けては、短期的な話題性に振り回されるのではなく、分散投資という基本に立ち返り、自身のリスク許容度に合った資産配分を見直すことが重要になるでしょう。

参考

・日本経済新聞「貴金属、上昇率で圧倒 銀・プラチナは今年2倍超に」
・日本経済新聞 マーケット・資産運用関連記事


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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