ゴールド市場の変化――「古い資産」が主役に戻った理由

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2025年、金(ゴールド)価格は歴史的な水準に達しました。国際市場では1トロイオンス4000ドルを超え、国内でも金小売価格が1グラム2万円台に乗せています。かつては危機時の避難先と位置づけられてきた金が、いまや若い世代を含む幅広い投資家に選ばれる存在となっています。金市場では何が起きているのでしょうか。

四半世紀続く上昇トレンド

金価格の上昇は、ここ数年に限った現象ではありません。2000年代初頭から続く長期的な上昇トレンドの背景には、世界的な財政拡張と通貨価値への不安があります。リーマン・ショック以降、各国は危機対応として大規模な金融緩和と財政出動を繰り返してきました。
その結果、基軸通貨である米ドルへの信認は相対的に低下し、価値の保存手段としての金の存在感が高まっています。さらに近年は地政学リスクの常態化や、金融政策が政治的影響を受けやすくなったことも、金価格を押し上げる要因となっています。

金ETFが市場構造を変えた

金市場の変化を語るうえで欠かせないのが、金ETFの存在です。現物の金を裏付けとするETFの登場により、金は機関投資家や年金基金にとっても扱いやすい資産となりました。
近年、世界の金ETFへの資金流入は急増し、保有残高は年間の鉱山生産量を上回る水準に達しています。これは需給面から金価格を押し上げる効果を持つ一方、相場が調整局面に入った際には、売りが集中しやすい構造も併せ持っています。金市場は、以前よりも金融市場的な性格を強めていると言えるでしょう。

投資家層の変化と日本市場

かつて日本では、金は価格が下落した局面で買われる資産でした。しかし現在は、高値圏であっても淡々と買いが入る傾向が見られます。
背景には、インフレに対する感覚の変化があります。長らく物価が安定していた日本では、インフレは遠い存在でした。しかし物価上昇を実感する局面が増え、特に若い世代ほど貨幣価値の目減りに敏感になっています。現物の金や金ETF、金を組み込んだ投資信託への関心が高まっているのは、その表れと考えられます。
実際、2025年には小型地金の供給が追いつかず、一時的に販売が見合わされる事態も起きました。これは、金投資が一部の富裕層のものではなく、より身近な選択肢になったことを示しています。

結論

金は古い資産でありながら、市場の姿は大きく変わりました。ETFの普及により投資手段が多様化し、参加者も広がっています。インフレ、通貨不安、地政学リスクといった要因が重なる中で、金は再び資産形成の中心的な選択肢として位置づけられつつあります。
今後の金市場は、価格上昇だけでなく、変動の大きさにも注意が必要です。それでもなお、金が持つ「どこでも価値が認められる資産」という本質は変わりません。ゴールド市場の変化は、私たちの資産観そのものの変化を映し出していると言えるでしょう。

参考

・日本経済新聞「ゴールド市場の変化」
・日本経済新聞 金融・商品関連記事


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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