2025年12月、国内の長期金利がついに2%を超えました。新発10年物国債の利回りは一時2.1%まで上昇し、約27年ぶりの高水準となっています。
同時に円安も進行し、為替・債券・株式市場がそれぞれ異なる反応を見せています。今回の動きは一過性のものではなく、日本経済が「金利のある世界」へ本格的に移行しつつあることを示しています。
本稿では、長期金利上昇の背景と、その影響を金融政策・財政政策の両面から整理します。
1.長期金利2.1%が意味するもの
22日の債券市場では国債売りが進み、長期金利は一時2.1%に達しました。これは1990年代後半以来の水準であり、日本の金融環境が大きく転換したことを象徴しています。
通常、中央銀行が利上げを行えば通貨は買われやすくなりますが、今回は利上げ後も円安が進行しました。この点が市場の警戒感を強めています。
2.利上げ後も続く円安とインフレ懸念
日本銀行は政策金利を0.75%に引き上げましたが、市場では利上げペースが緩やかにとどまるとの見方が広がっています。
円安が続けば、輸入物価を通じてインフレ圧力が強まります。結果として、将来の追加利上げ観測が高まり、国債売りにつながるという循環が生じています。
金融政策が物価上昇に後手で対応する、いわゆるビハインド・ザ・カーブへの懸念も、市場で意識され始めています。
3.財政拡大への警戒と国債増発
金利上昇のもう一つの要因が、財政拡大への懸念です。
高市早苗政権が26日に閣議決定する見通しの2026年度予算案は、一般会計総額が120兆円を超えると伝えられています。これは過去最大規模です。
国債の増発が中期債にとどまらず10年債にも及ぶとの見方が、債券市場の警戒感を一段と強めました。財政規律への不安は、インフレ期待を押し上げ、結果として長期金利の上昇圧力となります。
4.金融と財政、火消し役不在のリスク
市場が最も警戒しているのは、金融政策と財政政策の双方から、物価上昇を抑える明確な意思が見えにくい点です。
植田和男総裁は利上げ継続姿勢を示していますが、具体的な時期やペースには踏み込んでいません。一方で、政府は積極財政姿勢を強めています。
この組み合わせは、インフレ圧力が強まった場合に、市場が一段と不安定化するリスクを内包しています。
5.株式市場の反応と今後の注目点
興味深いことに、同時期の株式市場は上昇しました。円安による企業収益改善期待や、AI関連銘柄への資金流入が背景にあります。
ただし、金利上昇は個人消費や設備投資を抑制する側面もあり、業種間の明暗は分かれています。
25日に予定されている日本経団連での植田総裁講演は、今後の円相場や金利動向を左右する重要なイベントとなりそうです。
結論
長期金利2%超えは、日本経済が長年続いた超低金利環境から脱しつつあることを示しています。
円安、インフレ、財政拡大という複数の要因が重なり、市場は金融・財政政策の一貫性を厳しく見極め始めています。
今後は、利上げペースの明確化と財政運営への信認が、金利と為替の安定にとって重要な鍵となります。金利のある世界では、政策のわずかな曖昧さが、市場の大きな変動につながることを改めて意識する必要があります。
参考
・日本経済新聞「長期金利2.1%に上昇 27年ぶり水準 円安進行、財政拡大に懸念」
・日本経済新聞「金利2%の世界 国債・円売り止まらず」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

