相続や終活について一通り学んできた方にとって、最後に立ち止まって考えておきたいテーマが「おひとりさまの生活サポートと相続の準備」です。
配偶者や子どもがいない、あるいは将来頼れる人がいない可能性がある場合、元気なうちにどのような備えをしておくかで、老後の安心感は大きく変わります。
おひとりさまの終活では、単に遺言書を作成するだけでは不十分なケースが少なくありません。生活のサポートから死後の手続きまでを見据えた「全体設計」が重要になります。
おひとりさまが検討したい「5つの契約など」
おひとりさまの終活で基本となるのが、次の5つの契約などです。
- 見守り契約
- 財産管理等委任契約
- 任意後見契約
- 死後事務委任契約
- 遺言書
このうち、最初の3つは生前の生活を支えるための備え、後の2つは亡くなった後の手続きを円滑に進めるための備えです。
すべてを必ず準備しなければならないわけではありませんが、「どれを、どの順番で、どこまで備えるか」を考えておくことが大切です。
頼れる親族がいる場合の考え方
甥や姪など、頼れる親族がいる場合でも注意が必要です。
日常的な手続きや支援をお願いできたとしても、金融機関や役所の手続きでは正式な代理権限を求められる場面が多くあります。
将来、判断能力が低下した場合に備え、財産管理等委任契約や任意後見契約を結んでおくことで、本人が意思表示できなくなっても手続きを進められる体制を整えることができます。
また、死後の費用精算や遺産の扱いを明確にするためには、遺言書の作成も欠かせません。
頼れる親族がいない場合の備え
親族に頼れない場合は、5つの契約などを軸に準備を進めることが基本となります。
もっとも、費用面の負担が気になる方も多いでしょう。その場合、生前の生活支援は行政や福祉サービスを活用し、最低限として死後事務委任契約と遺言書を準備するという考え方もあります。
「亡くなった後の手続きを誰が担うのか」を決めておくことは、周囲に迷惑をかけないための重要な配慮です。
子どもがいない夫婦の場合
子どもがいない夫婦の場合、どちらかが先に亡くなったとき、そして夫婦ともに亡くなったときの財産の行き先を考えておく必要があります。
頼れる親族がいない場合には、夫婦それぞれが5つの契約などを検討し、専門家とともに全体像を設計しておくと安心です。
「死後事務委任契約」で見落としがちな注意点
死後事務委任契約では、葬儀や納骨、各種支払いに備えて、受任者に一定額の預託金を預けるのが一般的です。
ここで注意したいのが、死亡届の提出です。死亡届の届出人になれるのは法律で定められた人に限られており、死後事務委任契約の受任者が必ずしも記入できるとは限りません。
この点を補う手段として、任意後見契約を併せて検討する価値があります。死亡届の提出が遅れると、火葬や葬儀の手続きにも影響が出るためです。
「とりあえず遺言書」が後悔につながる理由
おひとりさまの終活でよくあるのが、「まずは遺言書だけでも作ろう」という判断です。しかし、全体設計をしないまま遺言書を作成すると、かえって問題が生じることがあります。
例えば、遺言執行者と死後事務の受任者が別々になってしまい、費用の精算がスムーズに進まないケースです。
遺言書は重要な書類ですが、単独で機能するものではありません。他の契約との組み合わせを考えたうえで作成することが重要です。
専門家選びの視点
相続や終活に強い専門家に相談すると、必要な契約の整理から実行までを見据えたプランニングが可能になります。一方で、費用がかかる点はデメリットといえるでしょう。
専門家を選ぶ際は、費用だけでなく、相性や経験、年齢差、引き継ぎ体制の有無も確認しておきたいポイントです。長期にわたって人生の一部を託す存在になるため、納得できる相手を選ぶことが大切です。
結論
おひとりさまの終活は、「何を準備するか」以上に、「どう組み合わせ、どう進めるか」が重要です。
元気なうちだからこそ選択肢があり、準備ができます。生活を楽しみ、健康を大切にしながら、将来の安心のための備えにも目を向けてみてはいかがでしょうか。
参考
・日本FP協会 会員向けコラム
・相続・終活に関するFP実務資料
・公正証書遺言および任意後見制度に関する解説資料
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

