税務調査の中でも、「消費税は特に厳しい」「消費税調査は指摘されやすい」といった声を耳にすることがあります。
こうした印象は、必ずしも間違いではありません。
AIを活用した税務調査において、消費税は分析との相性が非常に良い税目だとされています。
第6回では、なぜ消費税がAI分析で重視されやすいのか、その理由と注意点を整理していきます。
消費税は「数字のつじつま」が合いやすい税目
消費税の大きな特徴は、売上と仕入、経費の関係が数式的に整理しやすい点にあります。
課税売上、課税仕入、非課税取引などが明確に区分されており、計算構造が比較的単純です。
そのため、
・売上に対して仕入税額控除が不自然に大きい
・課税売上割合と経費構造が合っていない
・業種平均との差異が大きい
といったズレは、データ分析によって見つけやすくなります。
インボイス制度で可視化が進んだ
インボイス制度の導入により、消費税の取引情報は以前よりも詳細に把握されるようになりました。
適格請求書発行事業者かどうか、税率や税額の記載内容などが、データとして整理されています。
これにより、
・仕入税額控除の妥当性
・取引先との整合性
・記載内容の不一致
といった点が、よりチェックしやすくなっています。
AI分析は、こうした制度的に整理されたデータを得意とします。
消費税調査で見られやすいポイント
AI時代の消費税調査では、特に次のような点が注目されやすくなります。
・課税売上高の推移と納税額の関係
・簡易課税・本則課税の選択の整合性
・課税区分の誤りが繰り返されていないか
・インボイス対応が適切に行われているか
これらは、単年度では問題がなくても、数年分を並べることで違和感が見えてくることがあります。
不正より「構造的な誤り」が問題になりやすい
消費税調査で指摘される内容は、必ずしも意図的な不正ばかりではありません。
むしろ、制度理解の不足や処理方法の誤りが積み重なっているケースが多く見られます。
例えば、
・非課税売上を含めたまま仕入税額控除を計算している
・簡易課税の業種区分を誤っている
・インボイス制度移行後の処理が追いついていない
といった点は、悪意がなくても調査対象になりやすいポイントです。
説明できる処理が求められる
AI時代の消費税調査では、「なぜその計算になるのか」を説明できるかどうかが重要です。
処理方法を理解しないまま慣例で続けていると、説明が難しくなります。
帳簿、請求書、計算過程が一貫していれば、指摘を受けたとしても修正で対応できる可能性は高くなります。
結論
消費税は、AIによるデータ分析と非常に相性の良い税目です。
だからこそ、数字の整合性や処理の一貫性が、これまで以上に重視されるようになっています。
一方で、消費税調査が厳しいということは、適正な処理をしていれば説明が通りやすいということでもあります。
AI時代の消費税対応とは、特別な対策ではなく、制度を理解し、正しく処理し続けることだと言えるでしょう。
次回は、AI時代の税務調査をどう評価すべきか、
「厳しくなったのか」「それとも公平になったのか」という視点から整理していきます。
参考
・税のしるべ「AIと調査官の知見を組み合わせ精度の高い調査を実施」(2025年12月8日)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
