AIを活用した会計・確定申告サービスが急速に進化しています。
レシートの撮影だけで仕分けができるようになり、銀行・クレジットカード明細は自動で取り込まれ、確定申告書の入力までAIがアシストする時代が到来しました。
「じゃあ、5年後・10年後には確定申告は自動で終わるのでは?」
という疑問を持つ方も増えています。
実際、AIの進化スピードを踏まえると、確定申告の自動化は確実に進むと考えられます。しかし、「完全自動化」にはいくつかの壁もあります。
本記事では、AI×確定申告の未来像について、
- 近未来(1〜3年)
- 中期(3〜5年)
- 長期(5年〜10年)
にわけて解説し、人とAIがどのように役割分担するのかを探ります。
1.まず結論:確定申告は「ほぼ自動」になる
ただし「完全自動」ではなく、
“AIが自動化 → 人が確認する”
というハイブリッド形式が現実的な未来です。
そして、これは個人事業主やフリーランスにとって非常にメリットがあります。
2.近未来(1〜3年):AIによる“入力の自動化”が完成する
近い将来まず実現するのが、次の領域です。
● ① レシート撮影→自動仕分けのほぼ100%化
現在でも精度は高いですが、
- 税区分
- 店舗名
- 内容の認識
などの精度がさらに向上します。
● ② 電子領収書は完全自動連携
- Amazon
- 楽天
- 各種オンラインサービス
- 交通系決済
これらの電子領収書は、自動でクラウドに取り込まれ、仕分けまで完了するようになります。
● ③ 確定申告書の自動入力が一般化
控除証明書などが自動反映され、申告書の作成作業がほぼ不要になります。
すでに一部の会計ソフトはこの方向に進んでおり、これが普及していきます。
● ④ 利益・税額の“AI予測”は当たり前に
AIが
- 売上の傾向
- 経費の季節性
- キャッシュフローの未来
を分析し、納税準備に役立つ未来予測を提示するようになります。
3.中期(3〜5年):AIが“判断の一部”まで補完する
中期的には、AIが単なる処理の自動化を超えて、「判断の補助」まで行うようになります。
● ① グレーゾーン経費の判断補助
AIが、
- 使用目的
- 取引内容
- 取引先
などの情報から、費用区分の妥当性を提案し始めます。
まだ最終判断は人ですが、迷ったときの選択肢を提示する役割として有効になります。
● ② 家事按分の“推奨割合”の提示
AIは行動データや利用状況から
- スマホ代
- ネット代
- 車両費
などの按分割合を推奨できるようになります。
● ③ 電子帳簿保存法の自動判定
現在は要件理解が必要ですが、
AIが保存条件を自動チェックし、
「このデータは電帳法の要件を満たしています」
と判定してくれるようになります。
● ④ 異常値・ミスの自動検知が高度化
AIがデータの異常値をチェックし、
- 重複計上
- 未入金
- 不自然な経費
などを提示することで、トラブルを未然に防ぎます。
4.長期(5〜10年):法制度との連携が進み、“半自動申告”が標準に
完全自動化に最も必要なのは「制度整備」です。
今後、行政側のデジタル化が進むことで、以下が実現していきます。
● ① 税務署と会計ソフトのデータ連携(将来的な構想)
銀行残高のように、税務関連データも
- 自動で取得
- 自動で照合
する未来が想定されています。
● ② マイナンバーとの連携で控除データの自動取得
- 社会保険料
- 医療費
- ふるさと納税
が自動連携されると、控除の入力作業が完全に不要になります。
● ③ AIによる“自動チェック”の標準化
申告前にAIが「申告書の誤り」を自動検知し、
修正点を提案する仕組みが全体として高度化します。
● ④ 最終的には“確認ボタンを押すだけ”に
長期的には、
- 日常の取引データ
- 電子領収書
- 控除証明書
- AIによる仕分け
- AIによる判定
がすべて自動で揃い、
利用者は
「内容を確認して送信する」だけ
という形に近づいていきます。
5.それでも「完全自動」が難しい理由
AIがどれほど進化しても、「完全に任せられない領域」は存在します。
● ① グレーゾーンの判断
法律や税務は“白黒はっきりしない部分”が多く、
AIが判断するには限界があります。
● ② “節税”の最適解は人によって違う
- どこまで経費にするか
- どこまで事業投資をするか
- 法人成りをどう考えるか
といった判断は、個々の状況が大きく影響します。
AIは“補助”はできますが、
「人の価値観に基づく最終判断」は必要です。
● ③ 法改正への即時対応
AIが税法の細かい部分まで常に最新にできるとは限りません。
最終チェックとして人の確認が欠かせない場面があります。
6.AIが当たり前になった未来で“人”が担う役割
AIが進化すればするほど、人が担う役割は次の3つに集約されます。
● ① 判断
家事按分・特殊経費・グレーゾーンなど、人の状況理解が必要な判断。
● ② 意思決定
- どこに投資するか
- 何を売るか
- どのサービスに時間を使うか
といった経営判断。
● ③ チェック
AIが作成したデータの確認と最終承認。
AIは作業をゼロに近づけ、
人は「考える部分」に集中する未来へと移行します。
結論
AIの進化により、確定申告は間違いなく“ほぼ自動化”の方向へ向かっています。
- 日常の経理
- 電子領収書の保存
- 仕分け
- 申告書作成
はすでにAIが大部分を担えるようになりました。
今後5年〜10年の間に、制度整備と技術革新が進めば、
「AIがすべて整えて、人は確認して送るだけ」
というスタイルが一般化していきます。
ただし、それでも完全自動化には限界があります。
税務判断や価値観を伴う部分は人が担う必要があります。
AIを活用することで、確定申告はもっと手軽に、もっと身近に、もっと安全に行えるようになります。
“作業から解放され、判断に集中できる未来”を前向きに活用していくことが大切です。
参考
・国税庁「確定申告に関する資料」
・経産省・総務省「AI活用と行政DX関連資料」
・会計ソフト各社のAI機能ロードマップ
・日本経済新聞「AIエージェントで確定申告支援」(2025年12月3日)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
