防衛費2%と「新技術立国」 科学技術・安全保障・成長投資の交差点

政策

2025年度補正予算では、防衛費と成長投資が大きく取り上げられました。防衛関連費は補正で1兆円超を積み増し、科学技術政策は「安全保障との連携」を明確に打ち出しています。

本記事では、大型補正のもう一つの側面として、

  1. 防衛費GDP比2%達成の“算定変更”
  2. 科学技術政策と国家安全保障の一体化(新技術立国)

の2点について整理します。

1 防衛費GDP比2%の「前倒し達成」は何を意味するか

2025年度補正では、護衛艦や潜水艦の購入、迎撃ミサイルの整備などに予算がつき、防衛省分だけで8472億円、関連費全体では1兆円を超える積み増しとなりました。

当初予算と合わせると、2025年度の防衛関係費は約11兆円規模に達します。

政府はこの数字をもとに、「GDP比2%を2025年度中に達成する」と説明していますが、ここには大きな変化があります。

■算定方法が変わった

従来:

  • 当初予算ベースでGDP比を説明(補正は含めない)
  • 例:2024年度は1.6%と説明(補正分は計算に含まず)

今回:

  • 補正予算も含めて防衛費を集計
  • 分母に、数年前の名目GDP(約560兆円)を使用

この結果、補正を含め2%達成に見える構図となりました。

■最新GDPで計算すれば約1.8%

直近の名目GDPは600兆円を超える水準にあります。その数字を分母に用いると、防衛費約11兆円は約1.8%となり、「2%達成」とは言い切れません。

NATO諸国は最新GDPで算出しているため、国際比較のうえでも注意が必要といえます。


2 安定財源の課題

補正で積み増した1兆円超の財源は、

  • 税収の上振れ
  • 国債の追加発行

に依存しています。

しかし国債は将来負担を増加させ、税収の上振れは毎年期待できるものではありません。政府は2022年末に、防衛費増額の財源として2027年度には1兆円強を増税で賄う方針を決めましたが、所得税増税の開始時期は確定していません。

防衛費の増額が恒常化する中で、安定財源をどう確保するかは避けて通れない議論です。


3 科学技術政策に「安全保障」が組み込まれた意味

2026年度からの5年間を対象とする新しい「科学技術・イノベーション基本計画」では、初めて国家安全保障との連携が柱に据えられます。

政府が示した方向性には、次の特徴があります。

■デュアルユース(軍民両用)技術の本格推進

AI、半導体、核融合、バイオなどを「国家戦略技術」と位置づけ、研究開発と社会実装を重点的に支援します。これは、防衛需要と民間需要の境界が薄れつつある現状を踏まえた政策です。

■基礎研究と研究者への投資拡大

科研費を軸に、基礎研究への公的資金を大幅増額。
研究者の処遇改善や海外研究者の受け入れ拡大にも踏み込みます。

■研究開発税制の拡充

民間企業の研究開発投資を促進するため、税制面での後押しも強めます。

■研究者・学生の往来を拡大

2033年までに、研究者3万人、学生38万人の国際的な往来を目標に掲げています。

これらには、次のような背景があります。

  • 国際競争力の低下
  • 学術界での「軍民二分論」からの転換
  • 新技術を国力として活かす政治的な方向性
  • AI・半導体などでの遅れを取り戻す戦略的意図

成長投資と安全保障政策が重なり合い、日本の産業構造や研究環境そのものを変えていく可能性があります。


結論

防衛費GDP比2%の前倒し達成、そして科学技術政策と安全保障の連携強化。これらは、2025年度補正予算の大きな特徴であり、日本の国家戦略の方向転換を示す重要なシグナルでもあります。

  • 防衛費の算定方法の変更
  • 安定財源の不透明さ
  • 科学技術政策の安全保障化
  • 基礎研究・人材投資の本格強化

これらを総合的に理解することで、補正予算の意味がより明確になります。

税理士・FPとしては、今後の政策動向を注視しつつ、AI・半導体・サイバー・防衛関連などの分野での投資機会やリスク、税制支援の活用について、読者への解説を深めていくことが重要になると考えます。


出典

  • 日本経済新聞(2025年11月29日 各朝刊)

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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