第3回:電気自動車(EV)時代の費用構造 充電費用・バッテリー劣化・補助金までやさしく整理

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ガソリン価格の高止まりや脱炭素の流れを背景に、電気自動車(EV)の普及が進んでいます。
一方で、「EVは本当に安いのか」「バッテリー交換が高いと聞くが実際は?」など、費用に関する疑問は絶えません。
第3回では、EV特有の費用構造をガソリン車と比較しながら整理し、購入や利用を検討する際の判断材料を提供します。

1. EVの基本構造と費用の成り立ち

EVはエンジンを持たず、モーターと大容量バッテリーで走ります。
そのため、ガソリン車と比べて燃料費・メンテナンス費用が低い傾向にあります。しかし、車両価格が高い/バッテリーの劣化・交換費用など、別のコスト要素も存在します。

EVの費用は主に以下の5つに分類できます。

  1. 車両価格(補助金の有無)
  2. 充電費用(自宅・外出先)
  3. バッテリー劣化および交換見込み
  4. メンテナンス費(オイル交換なし)
  5. 充電設備の導入費(自宅充電が可能な場合)

ガソリン車とは異なる視点での比較が必要です。


2. 充電費用:ガソリンより“安いが差は縮小傾向”

(1) 自宅での充電費用

自宅の電気料金で充電できる場合、ガソリンより割安に収まることが多いです。

走行1kmあたりの費用の目安

  • EV:3〜6円
  • ガソリン車:12〜18円

例えば年間1万km走る場合、

  • EV:3〜6万円
  • ガソリン車:12〜18万円

→ 年間6〜12万円の節約効果が見込める計算です。

ただし、電気料金の上昇や深夜料金プランの改定により、割安感はやや縮小しています。

(2) 外出先の急速充電

  • 急速充電は自宅より高め
  • 月額プラン・従量制で料金差が大きい
  • 長距離移動が多い人は費用が増えやすい

外出先充電をメインにすると、コストメリットは低くなります。


3. バッテリー劣化と交換費用

EV最大の懸念はバッテリーの寿命です。

バッテリーはどのくらい持つ?

  • 一般的に 8〜12年/10〜20万km が目安
  • 多くのメーカーは 8年・16万km前後の保証 を付けている
  • 実際は劣化がゆるやかで、10年以上使えるケースも多い

交換費用の目安

  • 現在:40万〜120万円
  • 車種・容量により大きく変動
  • 交換せず乗り換える人も多い

バッテリー交換を必須と考える必要はありませんが、長期利用を前提にするなら、買い替えタイミングの検討が大切です。


4. EVはメンテナンス費が安い

EVはエンジン・トランスミッションがないため、部品点数が少なく、

  • オイル交換不要
  • ブレーキ摩耗が少ない(回生ブレーキで負担軽減)
  • 故障箇所が少ない

といった特徴があります。

一般に、ガソリン車の30〜50%程度に抑えられることもあります。

例:年間メンテナンス費

  • ガソリン車:3〜7万円
  • EV:1〜4万円

長期利用ではこの差が積み重なり、総費用にも影響します。


5. 自宅充電設備の導入費

自宅にコンセントや専用充電器を設置する場合、初期費用が発生します。

  • 200Vコンセント:約5〜15万円
  • 専用充電器(ウォールボックス):約10〜25万円

集合住宅では管理規約の確認や設備導入の可否がポイントとなります。
自宅充電ができるかどうかは、EV利用のコストと快適さを左右する要素です。


6. 車両価格と補助金

EVは車両価格が高めですが、国や自治体の補助金が利用できる場合があります。

  • 国のCEV補助金:一例として 20〜80万円
  • 自治体の上乗せ補助:最大数十万円(自治体により大きく差がある)

補助金がある年・ない年で実質価格が大きく変わるため、購入タイミングの見極めも重要です。


7. EVとガソリン車の“総費用”の比較

年間1万km走行・5年間所有の総費用の目安(概算)

費用項目EVガソリン車
車両価格(補助金控除後)高い低い
充電(燃料)費15〜30万円60〜90万円
メンテナンス費5〜20万円15〜35万円
車検・税金ほぼ同じほぼ同じ
5年間合計(一般的な例)350〜450万円330〜420万円

→ EVが必ず安いわけではなく、利用環境に左右されるのが実情です。
特に自宅充電環境の有無は大きな分岐点になります。


8. EVの向き・不向き

EVが向いている人

  • 自宅に充電設備を設置できる
  • 毎日の走行距離が多い(通勤など)
  • 外出先充電にあまり依存しない
  • ランニングコストを重視したい
  • 急発進・静粛性などEVの特性に魅力を感じる

EVが向いていない人

  • 集合住宅で自宅充電ができない
  • 長距離移動が多く急速充電が必須
  • 乗り換えサイクルが短い
  • 初期費用を抑えたい

結論

電気自動車(EV)は、

  • 充電費用
  • メンテナンス費
  • バッテリー寿命
  • 補助金
    など、ガソリン車とは異なる費用構造を持っています。

特に重要なのは次の3点です。

  1. 自宅充電ができるかどうか
  2. 年間走行距離がどれくらいか
  3. 補助金を含めた初期費用の負担

これらが整っている人にとって、EVはガソリン車よりも低コストで快適な選択肢となり得ます。
一方で、環境が合わない場合は想定以上の費用がかかる可能性もあります。

EVの導入を検討するときは、単に「エコ」「燃料費が安い」というイメージだけでなく、費用全体のバランスと生活環境を総合的に考えることが大切です。


出典

・日本FP協会「トレンドウォッチ」コラム(残価設定クレジット/マイカーリース・サブスク解説)
・経済産業省・国交省 公表資料(EV補助金関連)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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