政府は2025年11月28日、総額18兆3034億円にのぼる2025年度補正予算案を閣議決定しました。物価高対策や成長投資、防衛力強化など幅広い政策に財源を振り向ける内容で、新型コロナ禍以降では最大規模となります。
今回の補正予算は「責任ある積極財政」を掲げる高市政権の大きな政策シグナルです。日常生活に直結する支援から、AI・半導体などの国家戦略分野への投資まで、どのような狙いと影響があるのか整理します。
1 補正予算の全体像
2025年度補正予算の一般会計総額は18兆3034億円です。内訳を見ると、経済対策に17兆7028億円を充て、残りは予備費などにあてています。
分野別の構成は次の4つです。
- 生活の安全保障・物価高対策:8兆9041億円
- 危機管理投資・成長投資:6兆4330億円
- 防衛力・外交力の強化:1兆6560億円
- 予備費:7098億円
昨年度(2024年度)補正の13.9兆円を上回り、規模としても政策メッセージとしても大型の内容となっています。
2 生活支援・物価高対策のポイント
生活者向けの支援は今回の補正の中でも最も規模が大きく、8.9兆円が計上されました。
主な施策は次のとおりです。
- 自治体支援金の拡充
「おこめ券」や電子クーポンなど、地域裁量で使える支援策に活用可能。 - 電気・ガス代の負担軽減
2026年1~3月の光熱費を補助し、冬場の家計を下支え。 - 子育て世帯への支援給付
18歳以下の子ども1人につき2万円を給付。
物価高が続き家計の実質負担感が強まる中、広く・迅速に届く支援という位置づけです。ただし一時的な給付であるため、持続的な効果は限定的との指摘もあります。
3 成長投資・危機管理投資
高市政権が掲げる「強い経済」を実現する柱が、6.4兆円規模の成長投資・危機管理投資です。
対象分野は明確に「戦略産業」に寄せています。
- AI(人工知能)
- 半導体
- 造船
- サイバーセキュリティ
- サプライチェーン強靭化
特にAIと半導体は国際競争が激しく、国内育成を急ぐ分野です。研究開発や設備投資、関連人材の育成などに予算を投じ、世界的な技術競争に日本が乗り遅れないようにする狙いがあります。
4 防衛費の積み増し
防衛力強化には1兆6560億円を計上しました。国内総生産(GDP)比2%への到達時期を2027年度から2年前倒しする方針で、補正予算でもその軌道が反映されています。
国際情勢が緊迫する中、防衛費の拡大は中長期的な財政負担も伴うため、歳出増の持続性が今後の焦点となりそうです。
5 歳入は6割が国債
歳入構成を見ると、補正予算18.3兆円のうち、11兆6960億円(約6割)が国債の追加発行です。
内訳は以下のとおりです。
- 赤字国債:8兆1570億円
- 建設国債:3兆5390億円
その他の財源は
- 税収上振れ:2兆8790億円
- 税外収入:1兆155億円
- 24年度剰余金:2兆7129億円
政府は「当初予算との合計では40兆円ほど」として、前年より発行額はやや小さいと説明しますが、補正では国債依存度が高い構造が続いています。
6 「責任ある積極財政」の位置づけ
高市政権は、積極財政と財政規律の両立を掲げています。
首相は経済財政諮問会議で次のように述べました。
「経済成長を通じて税収を増やし、財政の持続可能性を実現する」
今回の補正はその方針を体現した形になっており、
- 家計支援
- 戦略投資
- 防衛力強化
と、短期・中期・長期の政策を同時並行で進める内容です。
ただし、成長による税収増が本当に財政健全化につながるのか、国債依存体質をどこまで改善できるのかは、今後の重要な検証ポイントとなります。
結論
2025年度補正予算は、物価高対策からAI・半導体投資、防衛力の前倒し強化まで、多岐にわたる政策を盛り込んだ大型の内容です。高市政権の政策姿勢を明確に示すものであり、「家計支援」と「成長投資」を同時に走らせることに力点が置かれています。
一方で、歳入の6割を国債に依存する構造は依然として重く、今後の経済成長や税収増がどの程度実現するかが、財政の持続性のカギになります。
国民生活に直接影響する支援策も多いため、政策の効果や課題を注視しながら、将来の財政運営を冷静に議論する必要があります。
出典
- 日本経済新聞「補正予算案18兆3034億円、午後決定」(2025年11月28日)
- 政府資料、経済財政諮問会議関連発言 など
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

