働き方改革や育休制度の充実により、30代は結婚・出産を経ても働き続けやすい環境が整った世代です。しかし、多くの家庭が「共働きでも家計が苦しい」と感じています。その背景には、収入と負担のミスマッチや、女性のキャリアの中断による長期的な影響が存在します。
本稿では、30代が直面する働き方と家計の課題を整理し、これからの働き方と資金計画のポイントを解説します。
1. 「M字カーブの解消=家計が楽になる」わけではない
女性の就業率のM字カーブは大きく改善し、男性の育休取得率も上昇、保育園・学童の整備も進みました。しかし、この“制度の改善”がそのまま家計の余裕につながっているとは言えません。
理由は、支出増がそれ以上に大きいからです。
・学童保育代
・シッター代
・保育園の延長保育代
・子どもの習い事や送迎サービス
これらが、共働き家庭の30代に集中して発生します。
2. 女性のキャリアに残る「L字カーブ問題」
ニッセイ基礎研究所の天野馨南子氏は、
「M字カーブは解消したが、L字カーブが残っている」
と指摘します。
L字カーブとは、
・20代後半をピークに女性の正規雇用率が下がる現象
・結婚・出産後に非正規化、時短化、キャリア中断が起きる形
を指します。
これはいわゆる“母の罰(motherhood penalty)”と呼ばれ、家計の将来に重大な影響を与えます。
3. 正社員継続か、非正規化か――8700万円の差
内閣府の試算では、
妻が正社員を継続したケースと、非正規フルタイムになったケースでは、
世帯の生涯可処分所得に最大8700万円の差
が生まれます。
この差は、
・住宅ローンの組める額
・教育費の選択肢
・老後資金の積立額
・家計の安定性
に直結します。
つまり、30代の家計にとって
「共働きでいること」は最大のリスク管理策
と言えます。
4. 今後の日本経済にとっても30代は重要
個人消費はGDPの約5割を占めます。
30代の消費意欲が高まれば、経済の成長力に直結します。
そのためには、
・教育費や保育費の負担軽減
・女性の働き続けやすい仕組み
・住宅取得の負担緩和
など、政策的な後押しも不可欠です。
結論
30代は、教育費・住宅費・子育て関連費が同時に発生し、負担が過去にないほど集中する世代です。共働きが一般化したからこそ、家計全体の安定には働き方の維持と長期的な視点が欠かせません。
個人としては、
・配偶者のキャリア継続の重要性の理解
・教育費・住宅費のバランス管理
・家計を長期で見通した資金計画
が重要になります。
社会としては、30代の消費力を引き出すことが、日本の成長にとって欠かせないテーマになります。
出典
・日本経済新聞「惑う30代 成長の盲点(中)」
・内閣府試算資料
・ニッセイ基礎研究所資料
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
