国内設備投資に8%減税へ 経産省が検討する新税制のポイントをわかりやすく解説

税理士
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経済産業省は2026年度税制改正で、企業の大規模な設備投資を後押しするために、投資額の最大8%を法人税から直接差し引ける新たな「設備投資減税」を検討しています。さらに、米国の関税措置により対米輸出が減少する企業には15%の優遇措置も視野に入れています。国際的にも設備投資を促す減税が広がるなか、日本企業の成長力を高める狙いがある制度です。

ここでは、新税制のポイントや背景、企業・経済への影響をわかりやすく整理します。

1 新税制の中心は「税額控除」

今回の検討案の柱となるのは、設備投資額の

  • 通常ケース:投資額の8%を法人税額から控除
  • 対米輸出の減少企業:15%を控除

という税額控除です。税額控除とは、利益から税金を計算するのではなく、計算後の税額そのものから直接差し引ける仕組みのため、企業にとって実質的なメリットが大きい制度です。

経産省はこの制度によって年間約5兆円の追加投資が生まれると見込んでおり、新税の減税規模は年間5000億円程度を想定しています。

2 対象は「成長分野の大規模投資」

制度を活用する投資計画は、以下の条件を満たす必要があります。

  • 投資利益率(ROI)15%以上
  • 一定規模以上の設備投資
  • 計画内容を専門家(会計士など)が確認し、経産局へ提出

重点分野には、高市政権が掲げる「17の戦略分野」が並びます。

主な分野

  • AI
  • 半導体
  • 造船
  • 重要鉱物
  • 自動車産業(主要産業として広範囲に対象)

経産省のヒアリングでは約130件の具体的な投資意向がすでに挙がっているとされています。

3 「即時償却」との選択制も検討

投資額を初年度に全額経費(減価償却費)として計上できる即時償却を選択できる案も盛り込まれています。

減価償却とは、工場や設備の費用を耐用年数に応じて複数年に分けて経費化する仕組みですが、即時償却が認められると初年度に一気に経費計上ができ、手元資金が増えるという利点があります。

とくに償却期間の長い設備を持つ造船分野などでニーズが高く、

  • 税額控除(8%〜15%)
  • 即時償却

この二つを企業が選べる柔軟性が検討されています。

4 背景にある「世界的な設備投資減税競争」

今回の日本の動きは、海外の動きとも連動しています。

  • 米国:即時償却の恒久化を盛り込んだ法律が2024年に成立
  • ドイツ:法人減税や加速償却の優遇を打ち出す法律が成立

国際競争力を維持するために、先進国が設備投資を後押しする税制を次々に導入している状況があります。

日本でも2014年に安倍政権が設備投資減税を導入しており、
3年間で8万件以上の活用、国内投資は80兆円→87兆円へ増加
という実績があります。

今回の新税制も、この流れをさらに強化する狙いがあります。

5 企業や経済への影響

今回の税制が実現すれば、企業には次のような影響があります。

企業へのメリット

  • 大規模投資のハードルが下がる
  • 国際競争力のある分野へ資金が流れやすくなる
  • 支出が大きい製造業でもキャッシュフローを改善しやすい

日本経済への効果(期待)

  • 設備投資の底上げ
  • 生産性向上と国内生産基盤の維持
  • AI・半導体など戦略分野への集中的な投資促進
  • 中長期的に税収増につながる可能性

一方で、成立には財務省との協議が控えており、

  • 税額控除の税率
  • 対象となる投資規模
  • 即時償却の範囲
    など具体的な調整が必要です。

結論

経済産業省が検討する「設備投資減税」は、国内投資の活性化と戦略分野の強化を目的とするものです。税額控除に加え、即時償却との選択制が認められれば、企業にとってはより実効性の高い制度となります。

AIや半導体など国際競争が激しい分野では、設備投資は企業の存続に直結します。世界が投資減税で競争する時代に、日本が投資基盤を強化できるかどうかは今回の税制が大きく左右するといえます。今後の政府・与党による調整が注目されます。


出典

・日本経済新聞「国内設備投資に8%減税 経産省、来年度税制改正で検討」
・経済産業省・政府による2026年度税制改正関連報道


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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