第4回 就業不能保険に加入するときのチェックポイント―就業不能の定義/免責/在宅療養/精神疾患/再給付―

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就業不能保険は、病気やケガで働けなくなったときの生活費を支える重要な保険ですが、商品によって保障内容が大きく異なるという特徴があります。
「加入していたのに、いざというとき給付対象外だった」という事態を避けるためには、約款や給付条件を丁寧に確認することが欠かせません。

今回は、加入前に必ず見ておきたい主要なチェックポイントを整理します。これらの項目は、保険会社ごとの違いが大きく、最も比較が求められる部分です。

1. 就業不能の定義(最重要ポイント)

就業不能保険の給付は「就業不能状態と認められるかどうか」で決まります。
この基準は主に2種類あります。

■ (1) 保険会社の独自基準

  • 医師の診断
  • 業務遂行能力
  • 身体機能・精神状態の評価
  • 日常生活動作の制限

独自基準は保険会社ごとに差が大きく、「同じ状態なのにA社では対象外、B社では対象」ということも珍しくありません。

■ (2) 公的制度連動型

  • 国民年金法の障害等級
  • 身体障害者手帳の等級
  • 公的介護保険の要介護度

公的制度を基準にするため分かりやすい反面、認定基準が厳しく、対象となるケースは限定されます。

どの基準で就業不能を判断するのかは、商品選びの最重要項目です。


2. 在宅療養の扱い

最近は在宅療養が増えており、通院しながらの療養や自宅療養期間で給付が出るかどうかは、実務上大きな差になります。

■ 確認すべきポイント

  • 医師の指示に従い自宅療養している場合は対象か
  • 訪問診療や訪問看護の利用条件
  • 在宅期間の上限(日数制限)の有無
  • 「就業できない」と判断する基準

同じ在宅療養でも、
「常時見守りが必要であること」
「医師が自宅療養を指示していること」
など、細かな条件を満たす必要がある場合もあります。


3. 復職後の取り扱い(再給付・時短勤務など)

いったん回復して復職すると、通常は給付が終了します。しかし実際には、

  • 一時的に復職しても働き続けられない
  • 時短勤務や限定業務での復帰
  • 再発による再休業

というケースが多く、「復職後にどう扱われるか」は非常に重要な検討ポイントです。

■ チェックポイント

  • 同一病名で再休業した場合の再給付の扱い
     →傷病手当金と同様に通算なのか、別計算なのか
  • 時短勤務は就労とみなされるか
     →フルタイム復帰でなくても就業不能扱いになるか
  • 部分復職(限定業務)の扱い
     →収入が減っていても対象外となることがある

商品の差が大きく、最も誤解が生じやすい部分です。


4. 免責日数(待機期間)

免責期間とは、「就業不能状態になってから給付が始まるまでの日数」です。

よくある設定は次のとおりです。

  • 60日
  • 90日
  • 180日

免責期間が短いほど保険料は高くなり、長いほど安くなります。

■ どう考えるべきか

  • 会社員 → 傷病手当金があるため免責が長くてもよい
  • 自営業 → 収入ゼロになるため短めにしたい

自分の職業と家計事情に合わせて、合理的に選ぶ必要があります。


5. 精神疾患への保障

精神疾患(うつ病・適応障害など)は就業不能の主要原因のひとつです。
しかし、精神疾患が給付対象外の商品も多く、確認は必須です。

■ チェックポイント

  • うつ病・適応障害が対象か
  • 給付期間に制限があるか(例:通算12カ月まで)
  • 特約で追加できるか
  • 自殺企図などが除外されていないか

精神疾患対応の有無は、商品の比較で最も大きな差を生む項目です。


6. ハーフタイプ(初期支払削減特則)の有無

ハーフタイプとは、就業不能後の一定期間(一般的には540日=1年6カ月)は給付額が半額になるものです。

■ メリット

  • 保険料が安くなる
  • 傷病手当金のある会社員との相性が良い
  • 長期保障を維持しながらコストを抑えられる

■ デメリット

  • 自営業・フリーランスには不向き(初期が厳しいため)

保険料と保障内容のバランスを取るための調整手段として有効です。


7. 保険期間・給付期間

商品によって大きく異なります。

  • 保険期間:一定年数 or 指定年齢(例:65歳・70歳)
  • 給付期間:一定年数 or 就業不能が続く限り(最長保険期間まで)

■ 注意点

  • 高齢期の再就職が困難な年齢(50代以降)は給付期間の長さが重要
  • 自営業の場合はより長期の給付設計が合理的
  • 保険料は期間が伸びるほど高騰するため、優先順位の整理が必要

8. 単独加入か、収入保障保険への付帯か

就業不能リスクへの備えは、

  • 就業不能保険へ単独加入
  • 収入保障保険に就業不能特約を付帯

の2パターンがあります。

■ 単独加入の特徴

  • 給付条件が詳細で手厚いことが多い
  • 商品選択の自由度が高い

■ 収入保障保険に付帯する場合

  • 保険料が抑えられる
  • 1つの保険で死亡と就業不能をまとめられる
  • ただし給付条件が簡易な商品もあり注意が必要

結論

就業不能保険は、商品ごとに給付条件や免責期間、精神疾患への対応、復職後の扱いなどが大きく異なります。
「なんとなく安心だから」
という理由で加入すると、必要な場面で十分な給付が受けられない可能性があります。

加入を検討する際は、

  • 自分の職業(会社員/自営業)
  • 社会保障の手厚さ
  • 家計の固定費
  • 生活費の最低ライン
    を明確にし、今回のポイントを踏まえながら、約款の細部まで確認することが欠かせません。

次回は、これらを踏まえて「どのように商品を選ぶか」「保険料と保障のバランスをどう判断するか」を具体的に解説します。


出典

・日本FP協会 コラム
・生命保険会社の就業不能保険パンフレット・約款
・健康保険法、国民年金法 ほか


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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