第2回 就業不能保険とはどんな保険か―医療保険・収入保障保険・所得補償保険との違い―

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働けなくなるリスクに備える方法を考えるとき、まず整理しておきたいのが「どの保険がどのリスクをカバーしているのか」という点です。医療保険や死亡保障の収入保障保険、さらには短期の所得補償保険など、似た名前の保険が複数ありますが、それぞれが補うリスクは異なります。

目的に合わない保険に加入してしまうと、本当に必要な場面で給付が受けられないこともあります。今回は、就業不能保険の基本を整理し、他の保険との違いを分かりやすくまとめます。

1. 就業不能保険とは

就業不能保険は「病気やケガにより長期間働けなくなったときの生活費」を補うための保険です。働けない期間の家計の“柱”である収入が減る、または途絶える事態を対象に設計されています。

主に生命保険会社が取り扱っており、

  • 保険期間が長期
  • 給付期間も長期(保険期間満了までなど)
    といった特徴があります。

給付の認定は「保険会社が定めた就業不能状態に該当するかどうか」によって判断されます。この基準は商品ごとに異なるため、理解が不可欠です。


2. 就業不能保険の主な対象リスク

長期間の就労中断により、以下のような収入減少に対応するのが目的です。

  • 主な病気(がん、心疾患、精神疾患など)による長期療養
  • 大きなケガによる長期離脱
  • 治療の必要性から復職できない状態
  • 自宅療養が続く状態(商品により対象)

医療費ではなく「生活費」を守ることがポイントであり、医療保険とは役割がまったく異なります。


3. 医療保険との違い

医療保険は、入院・手術・通院などの治療費を補うための保険です。

保険の目的医療費の補填生活費の補填
医療保険×
就業不能保険×

入院給付金や手術給付金は治療費には役立ちますが、家賃や食費、教育費など「生活費」には使い切れないこともあります。
働けない期間が長期になれば、この違いは非常に大きくなります。


4. 収入保障保険との違い

収入保障保険は、死亡した場合や高度障害状態になった場合に家族の生活費を支えるための保険です。主に“遺族”の生活維持が目的であり、働けない状態そのものは通常の対象ではありません。

比較点就業不能保険収入保障保険
対象リスク就労不能(病気・ケガ)死亡・高度障害
主目的本人の生活費家族の生活費
支払基準独自基準 or 公的基準死亡・障害等級・要介護認定など

最近は収入保障保険に「就業不能保障」を付加できる商品もありますが、給付条件が異なるため、内容の確認が重要です。


5. 所得補償保険との違い

所得補償保険は損害保険会社が取り扱う「短期間の就労不能」を補う保険です。

  • 保険期間は1~数年
  • 免責期間が短い(例:7日)
  • 給付期間も短い

傷病手当金の不足を補ったり、自営業の短期休業に対応したりするために活用できますが、長期離職に備える設計ではありません。

比較点就業不能保険所得補償保険
想定リスク長期の就労不能短期の就労不能
保険期間長期(10年〜90歳満了など)短期(1〜5年)
給付期間長期短期
免責期間長め(60日・180日)短め(7日など)

目的が異なるため、どちらが優れているかではなく「どの期間の収入減少を備えたいのか」で選ぶことが大切です。


6. 3つの保険の位置づけをまとめると

整理すると、次のように役割が異なります。

保険名補うリスク主な目的
医療保険医療費治療費負担の軽減
収入保障保険死亡・高度障害遺族の生活費
所得補償保険短期の就労不能短期の収入減少
就業不能保険長期の就労不能長期生活費の維持

結論

就業不能保険は、病気やケガで長期間働けなくなったときの生活費を守るための保険です。医療保険や収入保障保険、所得補償保険とは目的も範囲も大きく異なり、どのリスクを補いたいのかによって最適な選択が変わります。

短期間の収入減少に備えるのか、長期的な生活費を守りたいのか。自分が直面しやすいリスクや社会保障の仕組みを踏まえて、必要な保障を意識的に選ぶことが大切です。

次回は、会社員・公務員と自営業で必要な保障がなぜこれほど異なるのか、社会保障制度の構造から解説します。


出典

・日本FP協会「FPコラム」
・保険各社の公開資料(就業不能・収入保障・所得補償商品の比較資料)
・健康保険法、国民年金法 ほか


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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