【第5回】離婚後の生活設計 —— 住まい・収入・公的支援をどう確保するか

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離婚を決断すると、感情面だけでなく生活環境も大きく変化します。なかでも、離婚後の「生活の立て直し」は、最初に向き合うべき重要なテーマです。住まいをどうするか、収入をどう確保するか、子どもがいる場合の生活費や教育費をどう賄うか――これらを順序立てて考えることが、離婚後の安定した暮らしにつながります。本稿では、住まいの選択肢、収入の確保、公的支援制度の活用まで、離婚後の生活設計に必要なポイントを整理して解説します。

1 離婚後の生活設計で最優先のテーマは「住まい」

離婚後の生活を考えるうえで、最も重要であり、最初に確定させたいのが「住む場所」です。
住まいは生活の基盤であり、支出の中で最も比重が大きいため、早い段階で方向性を決めておく必要があります。

(1)現在の家に住み続けるケース

持ち家の場合、離婚後もどちらかが住み続ける選択肢があります。

  • 持ち家が夫婦の共有名義である
  • ペアローンを組んでいる
  • 相手名義の家だが財産分与として持ち分を得る

いずれの場合も、「住宅ローンの名義」「持分の調整」「固定資産税の負担」などの整備が必要です。

(2)賃貸住宅への転居

新しく賃貸住宅に入居する場合、次の点に注意が必要です。

  • 家賃の安定支払い能力が求められる
  • 審査では収入の有無が重視される
  • 敷金・礼金など初期費用が発生する

特に離婚直後は収入が不安定になりやすいため、物件選びと家計のバランスを考えることが重要です。

(3)一時的に実家を頼る

生活の立て直しや子どもの学区の問題などから、一時的に実家を頼る選択肢もあります。
初期費用が抑えられ、生活面のサポートも受けられるため、短期的な安定につながります。


2 生活費と家計の再設計

離婚後は家計構造が大きく変わるため、「生活費の再設計」が必要です。

● 必要な生活費の把握

家賃や光熱費、保険料、教育費など、離婚後の家計項目を再度洗い出し、固定費と変動費を整理します。

● 子どもの教育費

子どもの年齢や進路に合わせ、将来の教育費負担も見通しておく必要があります。
養育費がある場合でも、全額を賄えるわけではないため、家計とのバランスが重要です。

● 入念な預貯金計画

離婚直後は予期せぬ支出が多いため、少なくとも数か月分の生活費を確保しておくと安心です。


3 収入の確保

離婚後の経済的自立のためには、安定した収入を確保することが欠かせません。

● 就労の継続・転職

仕事を続けられるか、転職が必要かを早めに判断します。
育児との両立が必要な場合は、働き方を調整する必要もあります。

● パート・アルバイトからの再スタート

専業主婦(夫)だった場合、まず短時間勤務から始め、徐々にフルタイムへ移行するケースもあります。

● 児童扶養手当との併用

収入が増えるにつれて手当額が減るため、働き方と支援制度のバランスを確認することが大切です。


4 離婚後に利用できる公的支援制度

日本では、ひとり親家庭を支援する制度が多数用意されています。自治体によって内容は異なりますが、代表的なものは次のとおりです。

(1)児童扶養手当

ひとり親家庭に支給される生活支援の手当で、所得に応じて支給額が決まります。

(2)児童育成手当・就学援助制度

自治体によっては、子育て支援や学用品費補助、給食費の免除などを行っています。

(3)ひとり親家庭等医療費助成

医療費の自己負担を軽減する制度で、子どもの通院や入院費の負担を抑えられます。

(4)住宅支援(母子生活支援施設など)

安定した住まいを確保するまでの間、入居できる施設や家賃補助制度を設けている自治体もあります。

(5)就労支援

職業訓練、資格取得支援、ハローワークでの相談窓口など、再就職をサポートする制度があります。

● 支援制度は「市区町村レベル」で差が大きい

支援内容は自治体によって大きく異なります。
そのため、離婚前から自治体のホームページや窓口で確認しておくとスムーズです。


5 離婚後6か月以内にやるべき主な手続き

離婚後は多くの手続きが必要になります。特に次の項目は早めに進めましょう。

  • 氏の変更(必要に応じて)
  • 子どもの戸籍と住所の変更
  • 保険の名義変更・受取人の確認
  • 児童扶養手当など各制度の申請
  • 住民税・国民健康保険・年金の切り替え
  • 養育費の支払い確認、未払い時の対応準備

これらは生活設計に直結するため、チェックリスト化しておくと便利です。


6 「離婚後の生活」は準備が8割

離婚後の暮らしを安定させるためには、離婚成立そのものよりも「事前準備」の方が重要です。
住まい・生活費・収入・支援制度の4つをバランスよく整えることで、離婚後の生活の不安を大きく減らすことができます。


結論

離婚後の生活設計は、住まいの確保、生活費の再設計、収入の確保、公的支援制度の活用といった複数の観点から総合的に考える必要があります。特に住まいと収入の確保は生活の基盤となるため、早い段階で方向性を定めることが大切です。自治体の支援制度や手続きを把握し、必要な準備を進めておくことで、離婚後の生活を安定させるための道筋が見えてきます。


出典

・日本FP協会コラム「離婚後の生活設計」
・各自治体のひとり親家庭支援制度(一般的内容)
・民法・住民基本台帳法等の関連手続き


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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