士業広告の未来を描く 第6回 これからの士業に求められる情報発信戦略とは

税理士
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士業広告をめぐる環境は、SNSの普及とともに急速に変化しています。今や専門家が広告を出すことは珍しくなく、依頼者の多くはインターネット上の情報から相談先を探すようになりました。
シリーズ最終回では、これからの士業に求められる情報発信の姿勢や、広告の未来像についてまとめます。

1 「広告=案件獲得」から「広告=信頼形成」への転換

これからの士業広告は、一時的な集客ツールではなく、“長期的な信頼を育てる行為”として捉える必要があります。
依頼者は、広告そのものだけでなく、専門家の普段の姿勢や情報発信の一貫性を重視するようになっています。

そのため、以下の考え方が重要になります。

  • 広告は事務所の“人格”として見られる
  • 短期の反応より長期的な信頼を重視する
  • 誠実・透明・正確な情報発信を土台にする

士業にとって広告は、単なる宣伝ではなく「ブランド構築の基礎」になってきています。


2 情報発信の中心は「専門性 × 誠実性」

インターネット上には多くの情報があふれています。その中で士業が信頼を得るためには、次の2つを両立させることが不可欠です。

① 専門性

法令知識、制度の最新情報、実務経験などの裏付けが必要です。

② 誠実性

誇張しない、断定しない、誤解を与えないという姿勢が重要になります。

依頼者は「専門性が高い」だけではなく、「誠実である」専門家に相談したいと考えています。
このシンプルな視点が、広告のあり方を大きく左右します。


3 SNS・Web広告で求められる“戦略的発信”

これからの士業に求められるのは、無理に広告色を強めることではなく、「役に立つ情報を安定して提供する」という戦略です。

以下は実務で特に効果的な発信の方向性です。

① 制度改正・最新情報の分かりやすい解説

士業ならではの強みを活かした情報発信は、信頼構築に直結します。

② ケーススタディや事例を匿名化し紹介

誠実さを保ちながら、実務の雰囲気を伝えられます。

③ 業務の裏側や専門職としての姿勢を共有

人柄や思想が伝わり、依頼者の“心理的距離”を縮めます。

④ ブログ・SNS・動画の役割を分ける

  • ブログ:深い情報・体系的まとめ
  • SNS:速報性・短文
  • 動画:視覚的理解が必要なテーマ

複数の媒体を組み合わせることで、依頼者との接点が広がります。


4 士業に求められる「広告の倫理観」

広告がどれほど自由になっても、士業が持つ専門職としての公共性・社会性は変わりません。
そのため、今後の広告では次の点がより重要になります。

  • 実績・成果の誇張をしない
  • 不安を煽る表現を避ける
  • 依頼者の立場に立って情報提供する
  • 公共の信頼を損なわない発信を徹底する

この“倫理観の強化”こそが、今後の士業広告の中核となるテーマです。


5 業界全体で共有すべき「透明性」の価値

士業広告をテーマとするシンポジウムが開催される背景にも、透明性の重要度が高まっていることがあります。

透明性とは、
「依頼者が正しい判断をできるだけの情報が、正確に提供されている状態」
を指します。

これは広告だけでなく、士業のブランディング全体に深く関わる価値観です。

透明性の高い広告が広がれば、

  • 依頼者の誤解が減る
  • 士業全体のイメージが向上する
  • 業界への信頼が安定的に高まる

といった長期的なメリットも期待できます。


6 これからの士業は「発信し続ける専門家」へ

インターネット時代において、士業は専門家であると同時に、情報発信者でもあります。
情報を発信し続けることで、専門家としての立ち位置が強化され、依頼者とのつながりも深まります。

重要なのは、「内容の深さ」ではなく、
“継続して誠実な情報を届けること”
です。

無理に派手な広告を打つ必要はありません。
地道に、正確で、役立つ情報を積み重ねることで、士業の広告は自然と「信頼を育てるもの」へと変わっていきます。

結論

士業広告の未来は、単にルール強化や違反防止ではなく、「誠実な専門家が正しい情報を発信する文化」をどれだけ育てられるかにかかっています。
広告が案件獲得のための手段から、「信頼形成のツール」へと変わるほど、士業にとっても依頼者にとっても健全な市場が生まれます。

本シリーズを通じて、広告表現の在り方、グレーゾーン、チェックリスト、ケース改善、そして未来像まで広く取り上げました。
これらが専門家の情報発信を考える上での実務的なヒントとなれば幸いです。

出典

・士業適正広告推進協議会(開催内容)
・日本経済新聞(2025年11月24日付)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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