士業広告の改善ポイント 第5回 ケーススタディで学ぶ「適正広告」への実践的アプローチ

税理士
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士業広告における「不適切な表現」は、意図せず生まれることも多くあります。専門家として誠実に発信していても、SNSの特性や短い文章構成の影響で、結果的に誤解を招く表現になってしまうケースは少なくありません。

第5回では、実際にありそうなケースを取り上げながら、どのように表現すれば適正広告として望ましいのか、具体的な改善例を紹介します。

1 ケーススタディ①:成果を保証するように見える広告

■問題となりやすい表現

「当事務所なら必ず取り戻せます!」
「業界トップレベルの成功率を誇ります!」
「最短1日で解決可能!」

これらは誇張表現に該当し、依頼者に過度な期待を抱かせてしまいます。

■改善例

「状況に応じて最適な手続を提案します」
「過去の実績はありますが、結果は案件ごとに異なります」
「迅速な対応を心がけています」

誇張ではなく、専門家としての姿勢や取り組み方を表現することで、依頼者に対しても誠実な印象を与えられます。


2 ケーススタディ②:不安を煽る広告

■問題となりやすい表現

「今すぐ動かないと、損をします」
「このままでは重大な問題が起きます!」
「放置すれば取り返しがつかなくなります」

不安を刺激する言い回しは品位を欠く広告と判断される可能性があります。

■改善例

「早めの相談により、選択肢が広がることがあります」
「状況に応じて必要な手続を一緒に考えます」
「お気軽にご相談ください」

依頼者の不安を煽らず、冷静かつ丁寧に相談を促す表現への置き換えが有効です。


3 ケーススタディ③:実績を強調しすぎる広告

■問題となりやすい表現

「年間相談件数◯◯件で地域No.1!」
「圧倒的な経験量であなたの問題を解決!」

数字の根拠が曖昧な場合、誤認や誇大広告として捉えられやすい表現です。

■改善例

「これまで多くのご相談をいただいております」
「相談実績の一部はホームページで公開しています」
「経験を生かして丁寧に対応します」

具体的な数値を使う場合は、算出方法を明示し、誇張しないことが大切です。


4 ケーススタディ④:専門性を過度に誇張する広告

■問題となりやすい表現

「国内最高レベルの専門家です」
「他の士業とは圧倒的に違います!」

こうした表現は比較広告に近く、品位を損なうリスクがあります。

■改善例

「担当分野を中心に業務を行っています」
「専門資格・研修を生かして対応します」
「最新情報を踏まえて助言します」

専門性そのものではなく「日々の取り組み」や「姿勢」を丁寧に記述する方が安全です。


5 ケーススタディ⑤:SNSで広がりがちな“短い誤解”

■問題となりやすい投稿

「これだけやれば節税できます!」
「絶対にやってください!」
「これを知らないと損します!」

短い表現は拡散されやすい反面、文脈が切り取られやすく誤解を生みます。

■改善例

「一般的な方法のひとつですが、適用には条件があります」
「状況により異なるため、詳細は個別に確認が必要です」
「検討する余地がある制度を紹介します」

“言い切らない”“補足を添える”だけで、安全性は大幅に高まります。


6 ケーススタディ⑥:個人情報に触れる事例紹介

■問題となりやすい表現

「先日相談に来られた◯◯市のAさんは…」
「40代の会社員で、会社名は…」

個人が推測できる情報は広告として不適切です。

■改善例

「ある相談事例を紹介します(実際の相談とは構成を変えています)」
「匿名加工したケースを基に説明します」

事例紹介は依頼者の信頼を左右するため、匿名性の確保が不可欠です。


7 ケーススタディ⑦:「無料」「最安」などの価格訴求

■問題となりやすい表現

「地域最安の料金で対応!」
「初回無料(※別途条件あり)」

条件を分かりにくく記載すると誤認の原因となります。

■改善例

「初回相談は無料です(時間制限あり)」
「料金表はホームページで公開しています」

条件は明確に書き、依頼者にとって分かりやすく誠実な提示が望まれます。

結論

士業広告の不適切な表現は、必ずしも“悪意”から生まれるわけではなく、気づかないうちに誤解を招いている場合も多くあります。今回のケーススタディのように、少し表現を見直すだけで、広告の適正度は大きく向上します。

専門家の広告は「依頼者との最初の接点」であり、同時に「業界の信用を支える要素」でもあります。誠実で透明性の高い広告表現が広がれば、士業全体の信頼も確実に高まります。

次回の第6回では、「士業広告の未来像と、専門家が取るべき情報発信戦略」 をまとめます。

出典

・士業適正広告推進協議会(広告の考え方)
・日本経済新聞(2025年11月24日付)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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