士業による情報発信は、専門家を探す依頼者にとって大切な判断材料となります。しかし、専門性の高さゆえ誤解を招きやすい表現や、SNS特有のスピード感からくる不適切な発信も珍しくありません。本記事では、士業が日常的に確認したい「適正広告のチェックポイント」と、SNS運用で気を付けたい点を整理します。
1 広告作成前に確認したい「7つのチェックポイント」
士業広告の是非は、業法や会則を守っているかに加え、依頼者の理解と信頼を損なわないかどうかが重要です。以下のチェック項目は、日常の広告作成時に役立つ実務的な指針となります。
① 結果保証になっていないか
「必ず」「100%」「完全に解決します」などの表現は避ける必要があります。士業の業務は個別事情が大きく影響するため、結果の保証は不可能です。
② 不安を過剰に煽っていないか
「今動かないと危険です」「このままでは損しかしません」など、恐怖心を利用する表現は信頼を損なう原因になります。
③ 実績や数値の根拠を説明できるか
「成功率90%」「相談件数◯件」などの数字は根拠を明確にしておく必要があります。説明できない数字は使用しない方が安全です。
④ 他者比較になっていないか
「地域最安」「他の事務所より安心」など、競合を引き合いに出す表現は誤解を招きやすく、品位にも影響します。
⑤ 専門性を誇張していないか
専門的な資格や経験は強みですが、「国内トップレベル」「圧倒的プロフェッショナル」などの表現は慎重に使うべきです。
⑥ 情報の客観性・正確性を保っているか
専門家の意見と事実を混在させると、依頼者の判断を誤らせる可能性があります。情報の出典や根拠を意識して整理することが大切です。
⑦ 一般消費者の理解を妨げる要素がないか
専門用語の多用や説明不足は誤解の温床になります。「誰が読んでも理解できるか」を最後に必ず確認します。
2 SNS時代に強まる「情報発信の責任」
情報発信の手段が広がったことで、士業は発信機会を得る一方、誤解を与えるリスクも増えています。
SNSでは、短文・速報性・拡散性といった特性から、次のような問題が起こりやすくなります。
- 文脈が省略され、誤解される
- インパクトを重視した表現になりがち
- 不正確な情報が拡散されやすい
- 投稿が永続的に残りやすい
特に士業は「公共性を持つ専門職」であり、他の職種以上に発信内容の正確性と誠実さが問われます。
3 SNS投稿で注意すべきポイント
シンプルな対策を取るだけで、SNS発信のリスクは大きく減らせます。以下は実務で役立つポイントです。
① 投稿前に「第三者の目」を意識する
依頼者が読んだ場合に不安や誤解を抱かないかを確認します。
② 専門的なテーマは、言い切り表現を避ける
SNSでは短文になりがちですが、「一概には言えません」「ケースにより異なります」などの注意書きを添えるだけで誤解が軽減されます。
③ 事例紹介は匿名性を徹底する
実際の依頼者情報が推測される表現は避ける必要があります。
④ 過去投稿の「独り歩き」に注意
制度改正や新しい判例により、情報が古くなることを認識しておくことが大切です。
⑤ 炎上しやすいテーマは慎重に扱う
税・法律・相続などのテーマは議論が深まりやすく、断片的な発言が誤解を広げやすい分野です。
4 自分の発信を「資産」に変える姿勢が重要
士業による発信は、単なる広告ではなく、「信頼形成の一部」です。発信内容が誠実で一貫していれば、依頼者からの信頼につながり、長期的には事務所のブランドにも寄与します。
逆に、誇張された表現や不正確な情報は、一度炎上すれば取り返しがつかない大きなマイナスになる可能性があります。
結論
士業広告の適正化は「ルールを守る」だけでなく、「依頼者の誤解を防ぐ姿勢を徹底する」ことが本質です。SNSの普及により、専門家の発信は以前よりも大きな影響力を持つようになりました。
今回紹介したチェックリストやSNS運用のポイントは、日々の広告作成にも活用でき、安心して発信活動を続けるための基本になります。
次回は、士業の広告適正化に向けた「業界全体の課題と今後の方向性」について整理します。
出典
・士業適正広告推進協議会(広報資料)
・日本経済新聞(2025年11月24日付)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
