高市政権は日本経済を立て直せるか 就任1カ月で問われる「責任ある積極財政」の実力

政策

高市早苗首相が就任して1カ月が過ぎました。初の女性首相という新鮮さ、そして「強い経済」を掲げた姿勢により、支持率は70%前後と高水準を保っています。一方で、大規模経済対策や財政の方向性を巡り、早くも市場では「日本売り」の懸念がくすぶり始めています。

本稿では、高市政権の経済政策が直面する課題、過去政権との比較、そして今後求められる財政運営のポイントを読み解き、一般の方にも理解しやすい形でまとめます。

1.支持率の高さと「サナエノミクス」への期待

高市政権の船出は、海外も含めて大きな期待に支えられています。経済安全保障を成長機会と捉え、先端技術やインフラ整備を重視する姿勢は「これまでの延長線ではない」という評価を受けています。
実際、米シンクタンクの専門家からも「海外からの威圧への脆弱性を減らす発想は評価できる」との声が出ています。

2.過去の成功例が示す「変化を起こす政治」の条件

日本では、過去にも大きな経済変革を実現した政権がありました。

  • 小泉政権(2001年)
    郵政民営化や構造改革が高い支持を獲得。不良債権処理を加速させ、日本経済の停滞を打破する基盤となりました。
  • 第2次安倍政権(2012年)
    アベノミクスの「異次元緩和」が、デフレ克服に向けた強いメッセージとなり、沈滞していた経済のムードを変える契機になりました。

共通するのは、明確な方針と強力な政策チーム、そして市場との丁寧な対話です。

3.高市政権で懸念される「財政規律の行方」

高市首相は「責任ある積極財政」を掲げています。しかし、政権発足後の人事や政策の出し方を市場は慎重に見ています。

  • 経済財政諮問会議にリフレ派のメンバーを起用
  • 20兆円超の大規模経済対策
  • 野党も減税・給付を強く要求し、少数与党のため財政膨張圧力が高まる構造

これらが「財政悪化への警戒」を呼び、円安や金利上昇に拍車をかけかねない状況です。

特にエネルギー補助金など、富裕層にも恩恵が及ぶ政策を続けることは、財政の持続可能性の面で疑問が残ります。補助金が“根雪化”してしまい、経済の自律性を弱める危険性も指摘されています。

4.市場が最も重視するのは「説明力」と「選択と集中」

経済対策を拡大する一方で、財政規律をどう守るのか。その説明が弱ければ、市場は「放漫財政」と判断します。

必要なのは以下のポイントです。

  • 伸ばすべき戦略分野を明確にし、予算を分散させない
  • 中期的な財政健全化の道筋を提示する
  • 日銀や海外当局と丁寧に対話し、金利や為替の安定を図る
  • 財政・社会保障改革の具体策を示す
  • 状況に応じて政策を柔軟に修正する姿勢

特に、財務出身の片山さつき財務相が担う役割は極めて重要です。市場と丁寧にコミュニケーションを取り、財政運営の一貫性を示すことが求められます。

5.いま必要なのは「異なる価値観の議論」

専門家からは、政策運営には多様な意見のぶつかり合いが必要だという指摘があります。
かつての小泉政権では、竹中平蔵氏と吉川洋氏が経済の基本認識を巡って激論を交わしました。そのプロセスが政策の質を高め、市場の信頼につながった側面があります。

現在の日本もまた、財政と経済の“現実”を直視し、幅広い議論を通じて最適な政策を探る必要があります。


結論

高市政権は、支持率の高さと変革への期待という「追い風」を得てスタートしました。しかし、大規模経済対策や財政膨張に対する懸念も強まっており、政権は早くも重要な分岐点を迎えています。

今後の鍵は以下の3点です。

  1. 戦略分野への選択と集中
  2. 中期的な財政規律への明確なコミットメント
  3. 市場との丁寧な対話と政策の柔軟性

これらを適切に実行できれば、「責任ある積極財政」は日本経済を再び成長軌道に乗せる大きな武器になり得ます。
多様な意見を取り入れる懐の深さこそ、長期政権を目指すうえで欠かせない条件といえます。


出典

・日本経済新聞「高市政権の転機 責任財政へ真価問う」
・政府・日銀発表資料
・各種専門家コメント


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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