REITシリーズ 第2回「オフィスREITの現在地 ― 働き方の変化と二極化をどう読むか」

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新型コロナウイルスの影響でテレワークが急速に広がり、「オフィス需要は今後減るのではないか」という見方が一時的に強まりました。ところが、2024年以降は企業の出社回帰も進み、オフィス市況は一筋縄では説明できない“多面的な構造”になっています。

オフィスREITは、REIT市場の中でも歴史が長く、保有物件の規模も大きいセクターです。一方で、場所・ビルグレード・需要構造によって「勝ち組」と「苦戦組」がくっきり分かれるのが特徴でもあります。

本記事では、オフィスREITが直面している環境変化と、今後の投資判断のポイントについて整理します。

● オフィス需要は本当に減っているのか

テレワークの普及によって、オフィス需要が大きく減るのではという懸念がありました。しかし、実際には「完全リモート」から「出社+在宅を組み合わせたハイブリッド型」へ移行した企業が多く、思ったほど延床面積は減らず、むしろ増床する企業も一部で見られます。

理由としては、

  • 対面コミュニケーションの重要性の見直し
  • 採用・育成の観点
  • ABW(Activity Based Working)型レイアウト導入によるスペース再設計
  • 社員数増加に伴う座席需要

などが挙げられます。

オフィス需要が一方向に下がるというより、企業の働き方によって需要が細分化しているのが現状です。


● 勝ち組・苦戦組の二極化はより鮮明に

オフィス市況で特に注目されるのが「立地」と「ビルスペック」による二極化」です。

■ 勝ち組(高稼働):

  • 都心一等地(丸の内・大手町・渋谷・新宿など)
  • 築浅の大型ビル
  • 省エネ性能・防災性・快適性が高いグレードA物件
  • 企業イメージ向上につながる高品質ビル

これらの物件は賃料も下がりにくく、テナントの入れ替わりも少ない傾向があります。

■ 苦戦組(空室が増えやすい):

  • 郊外・周辺エリア
  • 築古の中小規模ビル
  • スペックが時代に合っていないビル
  • 駅距離の不利

オフィス面積の調整を行う企業が増えても、立地・スペックが良い物件から空室が埋まっていくため、両者の差は今後ますます広がるとみられています。


● 出社回帰で改善する部分もある

2023〜2024年にかけて大企業を中心に「出社回帰」の流れが広がりました。

  • 集合型プロジェクトの増加
  • 組織文化の再重視
  • 若手育成のため対面機会を戻す動き

これにより、賃料の下押し圧力が弱まり、都心部の空室率改善に寄与しています。

特に、働き方改革関連の新制度(オフィス整備補助制度など)が追い風になるケースもあります。


● オフィスREITの重要指標

投資家がオフィスREITを見る際には、次の指標がとても重要です。

  1. 稼働率(空室率)
  2. テナントの業種構成
  3. 平均賃料
  4. 既存賃料増減率(リリース・リニューアル時の賃料改定率)
  5. 物件の築年数・立地
  6. LTV(借入比率)と金利負担

特にリリース(退去)とリニューアル(更新)時の賃料改定率は、分配金の方向性を大きく左右します。


● オフィスREIT最大のリスクは「金利」と「供給」

■ 金利上昇

REITは借入を活用して物件を取得するため、金利が上昇すると収益を圧迫します。
オフィスREITはポートフォリオが大規模で借入額も大きいため、金利感応度が比較的高い傾向があります。

■ 新規供給(2025〜2027年)

東京では大型再開発が続いており、

  • 東京駅周辺
  • 渋谷
  • 品川
    などで新規オフィスが供給されます。

供給が増える時期には、既存ビルの空室率が一時的に上がる可能性があり、注意が必要です。


● オフィスREITの投資判断のポイント

オフィスREITは企業活動の活発さに連動する性質が強いため、次のような観点が重要になります。

  • 「勝ち組立地」かどうか
  • 賃料改定の動き(上がる物件かどうか)
  • 早期退去の少なさ
  • テナント分散(特定企業に依存していないか)
  • 金利上昇耐性(固定金利化率の高さ)
  • 再開発リスク(当該エリアの競合供給量)

また、オフィスREITは景気動向との連動性が比較的高いセクターのため、経済全体の流れを踏まえる視点も欠かせません。


結論

オフィスREITは、テレワーク普及による一時的な需要減から立ち直り、今は「立地」「ビルスペック」で明確な二極化が進む局面にあります。高品質ビルへの需要は底堅く、逆に築古・不利立地のビルは苦戦が続くなど、個別物件の選別が分配金の安定性を大きく左右します。

金利環境や新規供給動向など注意点はあるものの、都心一等地を中心に、賃料の底打ち・回復の兆しも見えてきました。
オフィスREITは景気に敏感な一方、長期的には一定の需要が維持されやすいセクターでもあります。

次回の第3回では、安定性が高いと言われる「住宅(レジデンス)REIT」について詳しく解説していきます。


出典

・国土交通省「オフィスマーケットレポート」
・三鬼商事「オフィス空室率・賃料データ」
・各種REIT決算資料


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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