未成年でもNISA口座を開設できるようにする方向性が示され、制度改正の検討が進んでいます。しかし、議論が進む一方で、「家庭としては何を準備しておけばいいのか」「制度が動く前にやらないほうが良い行動はあるのか」といった疑問も多いはずです。
最終回となる第5回では、制度改正前に押さえておくべきチェックポイントと、制度が決まった後の活用ステップを整理します。
1. 制度が“正式決定する前”にやってはいけないこと
制度は検討段階から正式決定まで、細かい要件が変わる可能性があります。
そのため、議論段階での情報をもとに次のような行動を取るのは避けるべきです。
- 焦って口座や資金移動の準備を進めすぎる
- 家計の積立配分を大きく変えてしまう
- 「こうなるはず」と決め打ちで教育費設計を変更する
- SNSなどで出回る “未確定情報” を鵜呑みにする
制度は必ず「政府決定→税制大綱→国会審議→成立→施行」という流れを経ます。
事前に動くよりも、制度が固まってから正確に対応するほうが賢明です。
2. 制度化までのスケジュール感を押さえる
現時点で示されている方向性は以下の通りです。
- 金融庁:2026年度税制改正要望に「年齢制限撤廃」を提示
- 政府・与党:高市首相らが提言を前向きに検討
- 制度化:最短で2026年以降の見通し
つまり、2025年〜2026年にかけて、具体的な制度設計が固まり始めると考えられます。
家庭としては、情報が大きく動く時期を意識しながら対応することが重要です。
3. 今のうちに家庭で準備しておくべきこと
(1)家計の“積立余力”を把握する
未成年NISAを活用する場合、子ども一人分の積立額を設定する必要があります。
- 毎月いくら積み立てられるか
- 教育費・老後資金・生活防衛資金のバランス
- 無理なく続けられる金額はいくらか
今のうちに家計全体を点検しておくと、制度開始後にスムーズに積立方針を決められます。
(2)子ども名義の金融情報を整理する
未成年NISAでは、子ども本人名義の口座管理が前提となるため、次の準備が必要です。
- 子どものマイナンバーカード
- 子ども名義の銀行口座の有無
- 親が代理で行う場合の管理ルール
- 家族内の資金移動の整理
口座を“どこに作るか”は制度決定後で良いですが、基礎情報は今から整えておくと安心です。
(3)教育費のシミュレーションを見直す
未成年NISAは、教育費と投資をどう組み合わせるかが重要になります。
- 大学入学までに必要な資金
- 奨学金や学費支援制度との併用
- 投資と貯蓄の比率
- 必要時期に向けた取り崩し計画
制度の柔軟性を活かすために、教育費の計画全体を一度整理しておく価値があります。
(4)祖父母からの援助を整理しておく
もし祖父母からの教育支援がある場合、制度開始後は「毎年の贈与→積立」にしやすくなります。
- 毎年の贈与額
- 贈与税の基礎控除(110万円)との関係
- 子ども名義口座の管理ルール
- 祖父母の資産計画との整合性
事前に家族で話し合っておくことで、制度開始後の運用がスムーズになります。
4. 制度決定後にやるべきこと(実践ステップ)
Step1:制度の正式決定内容を確認
税制大綱・国会審議の結果を反映した“正式な要件”を必ず確認します。
Step2:金融機関選び
- 手数料
- サービスの使いやすさ
- 家族でまとめて管理できるか
- 未成年口座のサポート体制
このあたりが比較ポイントになります。
Step3:積立額の設定
第3回の内容を踏まえ、家計に合った「続けられる金額」を設定します。
Step4:商品選び
長期分散投資を基本に、家族の資産形成全体を見ながら選びます。
Step5:家庭内の金融教育の計画
第4回で紹介した“月1回の資産チェック習慣”などを取り入れると効果的です。
結論
未成年NISAは、制度が動き出せば大きなメリットをもたらす制度です。
しかし、制度改正はあくまで“議論の途上”であり、正式決定前に焦った判断をしないことが最も重要です。
家庭としてできる最善のスタンスは次の3つです。
- 情報は「正式決定」を待って冷静に判断する
- 今のうちに家計・名義・資金ルールを整理する
- 制度開始後に、家族で長期資産形成を確立する
未成年NISAは、子どもだけでなく、家族全員にとって大きな財産となる仕組みです。
制度改正の動向を注視しながら、家族の未来につながる準備を進めていきましょう。
出典
・金融庁 2026年度税制改正要望
・日本経済新聞「NISA年齢制限撤廃を 岸田氏ら、首相に提言」
・内閣府 資産所得倍増プラン関連資料
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
