未成年でもNISA口座を開設できるようにする方向性が示されたことで、家庭の資産形成はこれまでとは大きく違う選択肢を持つ可能性があります。
これまでNISAは「大人が自分の将来のために使う制度」という印象が強く、子ども名義の資産形成は学資保険や預金が中心でした。しかし、年齢制限が撤廃されれば「家族単位で長期の資産づくり」を設計できる時代が到来します。
第2回では、未成年NISAが家計にもたらす変化を、ライフプランの観点から具体的に整理します。
1. 子どもの教育費づくりが“投資×長期”へシフト
これまで教育費準備の主な手段は、次のような選択肢でした。
- 学資保険
- 定期預金
- 親名義の投信積立
- ジュニアNISA(2023年終了)
しかし、低金利が続く環境では預金や保険では資産は増えにくく、また学資保険は中途解約リスクや返戻率の低下が課題となっていました。
未成年NISAが解禁されれば、
「子ども名義の積立投資で教育費をつくる」
という仕組みが現実的になります。
長期投資は複利の効果を最大限に生かすことができます。たとえば、
- 月1万円を0歳から積み立て
- 年4%で運用した場合
- 18歳時点で約300万円
となり、教育費の基礎資金として十分機能します(あくまで仮試算)。
教育費を「投資で計画的につくる」時代が、本格的に動き出す可能性があります。
2. 家族全員で資産形成できる“世帯ポートフォリオ”の発想
未成年がNISA口座を持てるようになれば、家庭の資産管理は次のように広がります。
- 親:自身のNISAで老後資金をつくる
- 子:未成年NISAで独立資金や教育費を形成
- 祖父母:生前贈与として毎年の積立を支援
このように「家族全体を一つのポートフォリオとしてとらえる」考え方が可能になります。
特に祖父母が教育資金の援助を考えている場合、毎年の積立を贈与として扱えます。ただしこの点は贈与税・名義預金との関係が絡むため、後述する第3回で詳しく整理します。
世帯全体での長期資産形成
という新しい発想が広がることは、今回の制度見直しの大きなポイントです。
3. ジュニアNISAとの違い:自由度が高い制度に変わる
ジュニアNISAは一定の役割を果たしましたが、デメリットも目立ちました。
- 18歳まで原則払い出し制限
- 制度の恒久化がなく見通しが立てづらい
- 教育費などの短期資金と相性が悪い
対して、今回想定される未成年NISAは、
- 現行NISAと同じ仕組みを利用
- 払い出し制限なし(現行制度の枠組みを踏襲)
- 家族内で運用・管理しやすい
という自由度の高い制度になると見込まれます。
「教育費のために積み立てるけれど、必要ならいつでも取り崩せる」
という柔軟性が確保される点は、家庭にとって極めて大きいメリットです。
4. 子どもが18歳を迎えてからの“資産の受け渡し”がスムーズに
未成年NISAで積立を行うと、子どもが18歳になった段階で次のようなメリットが生まれます。
- 投資経験のある若者が育つ
- 自分名義のNISAをそのまま継続して運用できる
- 社会人になっても積立習慣が続く
- 結婚・独立時点で一定の資産を持てる可能性が高い
特に「積立投資を社会人初期から当たり前にできる若者が増える」ことは、長期的な金融教育として大きな成果を生むと考えられます。
5. 家計のキャッシュフロー設計への影響
未成年NISAを利用する場合、家庭のキャッシュフローにも影響があります。
- 子ども1人につき“毎月の積立枠”が増える
- 家計の長期貯蓄と短期貯蓄を見直す必要
- 教育費・老後資金・生活防衛資金のバランス整理
例えば、子育て世帯では「教育費の貯め方」が根本から見直される可能性があります。
保険や銀行預金から、
投資×計画的積立
へと比重が移る家庭が増えると予想されます。
結論
未成年NISAの解禁は、家庭の資産形成そのものを大きく変える力を持っています。
教育費だけでなく、子どもの独立資金、結婚資金、さらには老後の金融リテラシーまで、家族の人生設計全体に効果が広がる制度です。
従来の「大人が使う制度」という枠を超え、
“家族全体で資産を育てる”という新しい時代の入り口
と言えるでしょう。
次回の第3回では、
「未成年NISAの上手な使い方」
として、実際の積立方法・商品選び・贈与税との注意点など、具体的な運用実務に踏み込みます。
出典
・金融庁 2026年度税制改正要望
・文部科学省「教育費負担に関する調査結果」
・日本経済新聞「NISA年齢制限撤廃を 岸田氏ら、首相に提言」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
