インボイス制度の経過措置が「令和8年10月」で切り替わる?(免税事業者からの仕入れをした場合の注意点を分かりやすく解説)

税理士
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インボイス制度の開始から1年以上が経ち、実務では「免税事業者との取引」に関する相談が増えています。特に、免税事業者からの仕入れについては、一定割合の仕入税額控除が認められる“経過措置”が令和11年9月まで続きます。

今回、国税庁が令和6年10月28日に「インボイスの取扱いに関するご質問」を更新し、令和8年10月1日前後の取引で どちらの割合(80%→50%)を使うか といった実務上とても大事なポイントが追加されました。

この記事では、一般の方にも分かりやすいように、この「経過措置の切り替わり」と「短期前払費用の扱い」について整理します。

1.そもそも “経過措置” とは?

インボイス制度が始まると、原則としてインボイス(適格請求書)がない仕入れについては消費税の仕入税額控除を使えなくなります。

ただし、急な影響を避けるため、令和5年10月〜令和11年9月までは、免税事業者との取引でも仕入税額控除を一定割合で認める特例(経過措置)が設けられています。

期間控除できる割合(仕入税額相当額に対し)
令和5年10月1日〜令和8年9月30日80%
令和8年10月1日〜令和11年9月30日50%

つまり、令和8年10月1日を境に「80% → 50%」へ段階的に縮小します。


2.問題:令和8年10月1日前後の取引は、80%?50%?

今回、国税庁によって追加されたのがこの点です。

結論としては、次の基準で判定します。

●どの割合を使うかは「課税仕入れの発生日」で判断する

  • 令和8年9月30日までに仕入れが成立したなら 80%
  • 令和8年10月1日以降に仕入れが成立したなら 50%

ここでいう「仕入れの発生日」は、一般的には役務の提供完了日/商品の引渡日が基準になります。
請求書の日付や支払日ではないため、注意が必要です。


3.短期前払費用の場合はどうなる?

もう一つ追加されたのが「短期前払費用(1年以内に提供を受けるサービスの前払い)」を免税事業者に支払った場合の扱いです。

ポイントは次のとおりです。

●短期前払費用でも、控除割合の判定は「役務提供の期間」で行う

例:令和8年9月に、12ヶ月の契約料金を前払いした場合。

  • 令和8年9〜9月30日までの部分 → 80%
  • 令和8年10月1日以降の提供部分 → 50%

つまり、支払った日がいつであっても、サービス提供期間がまたがる場合には、期間に応じて80%と50%を分けて計算することになります。


4.なぜこんなに細かいのか?

インボイス制度では、「インボイスを発行できない免税事業者に払った消費税分を、本当に控除してよいか?」が政策上の論点です。

そのため、経過措置の適用は“支払いベースではなく「サービスを受けた時点」”で判断されます。
実務では、領収書や契約書のサービス期間を確認することが不可欠になります。


結論

令和8年10月1日を境に、免税事業者からの仕入れに関する経過措置は 控除割合が80%から50%へ縮小します。
今回の更新ポイントは次のとおりです。

  • 判定基準は「仕入れ(役務提供)の発生日」
  • 令和8年10月以降の取引は 50%
  • 短期前払費用は サービス提供期間で按分 して判断

一般の方でも、フリーランスと取引する会社や、個人事業主が外注委託を利用する場面では影響が生じます。
特に長期間契約の前払いをしている場合は、契約書に記載された提供期間にも注意してください。


出典

  • 国税庁「インボイスの取扱いに関するご質問(令和6年10月28日更新)」
  • 消費税法、インボイス制度関連資料(国税庁)

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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