【通勤手当の非課税限度額が引き上げへ】2024年度分まで遡って適用・年末調整での精算ポイントをわかりやすく解説

税理士
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政府は2024年11月、物価高対策の一環として、自動車や自転車などで通勤する人に支払われる「通勤手当」の非課税限度額を引き上げました。通勤手当は多くの会社員に関わる制度であり、その取り扱いは年末調整・源泉徴収票・企業の給与計算にも影響します。今回の改正は2024年4月1日以後に支払われる通勤手当まで遡って適用されるため、すでに受け取った通勤手当が非課税となるケースも発生します。この記事では、改正内容と実務での確認ポイントを整理します。

1.今回の改正のポイント

国税庁は11月19日、所得税法施行令の一部改正政令が公布されたことを受けて、通勤手当の非課税限度額の引き上げに関する各種情報を公開しました。
主なポイントは次のとおりです。

  • 自動車・自転車等で通勤する人の非課税限度額が引き上げられる
  • 2024年4月1日以後に支払われる通勤手当に遡って適用
  • 11月20日施行
  • 精算方法・源泉徴収票の記載・Q&A・説明動画などが国税庁により公表

今回の改正は、通勤手当が課税された後に非課税となるケースがあり、年末調整での「精算」が重要になります。


2.非課税限度額の扱い

通勤手当は、通勤距離に応じて非課税限度額が決められています。
限度額を超える部分は給与として課税されますが、今回の改正により多くの人で非課税枠が拡大します。

たとえば、自動車通勤の距離区分に応じた非課税額が引き上げられるため、これまで一部が給与課税となっていた人も、改正後はその部分が非課税枠に収まる可能性があります。


3.年末調整での精算方法

4月以降に受け取った通勤手当について、会社が旧基準で給与課税していた場合、年末調整で再計算する必要があります。

(1)所得税の精算

  • 年初から12月までの通勤手当を、改正後の非課税限度額にあてはめて再計算
  • 本来は非課税となる金額が給与として課税されていた場合、年末調整で還付される

(2)源泉徴収簿の書き方
国税庁は、源泉徴収簿の記載例を公表しています。
非課税限度額を超えて課税していた金額をどのように修正するかを示した実務例が提供されています。

(3)給与所得の源泉徴収票への記載
非課税通勤手当は、源泉徴収票の「支払金額」には含めません。
今回の改正により、課税分が非課税に変わる場合、支払金額が従来より小さくなる可能性があります。


4.企業側の実務での注意点

企業の給与計算担当者や経理部では、次のような対応が必要になります。

  • 改正後の非課税限度額へ通勤手当データを再計算
  • 課税済み部分がある場合は年末調整で還付処理
  • 新旧基準を用いた源泉徴収簿の整備
  • 年末調整後の源泉徴収票への記載誤りに注意
  • 社会保険の報酬月額の再確認(必要な場合のみ)

遡及適用となるため、4月以降の支払い実績を正確に把握することが重要です。


結論

通勤手当の非課税限度額の引き上げは、働く人にとって手取りが増える改正です。一方で、企業や給与計算担当者には、4月以降の支給実績を再計算し、年末調整での再処理が必要になるなど、実務上の影響が大きいといえます。国税庁は源泉徴収簿の記載例やQ&A、説明動画を公開しており、これらの資料を活用することでスムーズに年末調整を進めることができます。今年の年末調整は、例年以上に「通勤手当の非課税範囲」の確認を忘れずに行うことが大切です。


出典

・国税庁「通勤手当の非課税限度額の引上げに関する情報」(2024年11月19日公表)
・所得税法施行令の一部を改正する政令(2024年11月19日公布)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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