上場企業が為替見通しを円安方向に修正する理由(日本企業の業績・家計への影響をわかりやすく整理)  

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足元の急激な円安を受けて、上場企業が想定為替レートを次々と見直しています。主要370社の2026年3月期の平均想定レートは1ドル=145円台に達し、前回から円安方向へ修正されました。企業の業績にはプラス要因とマイナス要因が混在しており、今後の金利環境や日本の財政運営をめぐる不透明感も重なっています。本稿では、企業が為替想定を変更した背景と、輸出企業・輸入企業への影響を整理しながら、家計や投資への示唆も含めて解説します。

● 想定為替レートは平均「1ドル=145.4円」に

主要370社の集計では、通期の想定為替レートは平均で1ドル=145.4円となりました。
145円台を採用した企業がもっとも多く、140円台・148円台・150円台と続きます。
足元の相場が150円台半ばで推移するなか、企業側がより実勢に近づけた形です。

背景には次の要因があります。

  • 日米金利差の縮小が見通しづらい
  • 日本の財政拡張に対する市場の警戒感
  • 金融政策が転換するタイミングが読みにくい

企業はこうした不透明感を踏まえ、短期間での急激な円安進行に対応しようとしています。


● 輸出企業にとっては「追い風」が続く

輸出企業は円安によって海外売上の円換算額が増えるため、業績押し上げ効果が見込まれます。

  • 京セラ:135円 → 145円(10円の円安方向に見直し)
  • コマツ:135円 → 143.2円
  • 第一三共:140円 → 約148円
  • キッコーマン:約148円へ修正
    「150円台が続く前提で対策を取っている」と経営陣が言及

大和証券の試算では、1円の円安で主要企業の経常利益が0.3%増加します。
仮に今期末まで155円台が続けば、年間平均は約150円となり、想定より5円ほどの円安です。輸出企業の業績はさらに上振れする可能性があります。


● 輸入企業や燃料コスト依存企業には「逆風」

一方で、原材料や燃料を輸入に依存する企業の負担は高まっています。

  • 航空会社(ANA)
    為替予約で一定の影響を抑えているが、円安方向に振れれば燃料費が増加。
    150円より2~3円の円安なら「影響は限定的」とする一方、急変動には警戒。
  • ニトリHD
    海外生産・輸入販売のため、1円円安で経常利益が20億円減少。
    今期は147円台で予約しているため影響は軽微だが、来期以降の円安長期化はリスク。

企業によっては消費者需要の弱さも重なり、円安が価格転嫁の難しさを強めています。


● 為替の影響は「かつてほど大きくない」指摘も

海外生産比率が高まったことで、円安メリットは過去と比べて縮小しているとの分析もあります。

三井住友DSアセットマネジメントの市川氏は、

「円安は日本企業全体でみればプラスだが、海外生産比率の拡大で押し上げ効果は以前より小さくなっている」

と指摘しています。

企業が国内に生産拠点を置き海外へ輸出していた時代と比べると、為替感応度は構造的に低下しており、業績への影響は企業ごとに大きく異なるようになっています。


● 家計や投資家にとっての示唆

為替見通しの変化は個人の家計や投資にも影響します。

  • 生活面では
    輸入食品・ガソリン・電気料金などの価格上昇圧力が続く可能性。
  • 投資面では
    円安が企業業績を押し上げる企業を選別することがポイント。
    一方、輸入コスト増で利益が圧迫されやすい企業には注意が必要です。

今後の為替は、日米の金利差、日本の財政運営、日銀の政策転換など複数の要因で揺れ動きます。企業の想定レート変更は、こうした環境下で「保守的に見積もる」姿勢の表れと言えます。


結論

企業が想定為替レートを145円台へ引き上げた背景には、足元の急速な円安と、日米金利差や財政運営をめぐる先行きの不透明感があります。円安は輸出企業にとって追い風となる一方、輸入コスト増を抱える企業には逆風となり、企業ごとの感応度はますます二極化しています。海外生産比率の高まりにより、円安の恩恵・デメリットは従来よりも薄まっている点にも留意が必要です。個人の家計や投資においても、物価上昇リスクや企業の為替感応度を踏まえた判断が求められます。


出典

日本経済新聞「想定為替レート、企業145円」(2025年11月)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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