日本の債券市場で、財政悪化への懸念が再び強まっています。特に償還までの期間が30年〜40年といった「超長期国債」の利回りが急上昇し、過去最高水準を更新しました。
利回りの上昇(=債券価格の下落)は、国の借金の増加や補正予算の規模拡大への不安を反映しており、住宅ローン金利を含む私たちの家計にも影響を及ぼす可能性があります。
本稿では、最新の金利動向を整理しつつ、なぜ超長期金利が動いているのか、そして家計はどんな点に注意すべきなのかをわかりやすく解説します。
1. 超長期国債の利回りが急上昇
11月19日、新発40年債利回りは 一時3.705% と過去最高を更新し、新発30年債も3.34%と高水準に達しました。
30年債の利回りは11~18日の1週間で0.135%上昇し、高市政権発足直後(2024年秋)以来の速いペースとなりました。
これは「債券が売られている」ことを意味し、その背景には以下の懸念があります。
- 大規模補正予算により国債発行が増える可能性
- 財政拡張によるインフレ圧力の高まり
- 将来の国債需給の不透明感
特に2025年度の補正予算が13.9兆円を上回るとの見方が市場で強まり、20兆円規模に膨らむとの観測も出ています。
2. 債券市場が懸念する「財政拡張」
高市政権は物価高対策と家計支援を目的に、補正予算の規模拡大を検討しています。
しかしこれが国債発行の増加につながり、債券の供給が増えるとの懸念が市場を揺さぶっています。
債券価格は需給の影響を強く受けるため、
- 国債が増える → 価格が下がる → 利回りが上がる
という流れで金利上昇につながりやすくなります。
海外投資家からは「財政拡張がインフレを加速させるリスク」も指摘されています。インフレが加速すれば、金利はさらに上昇しやすくなります。
3. 長期金利にも波及
超長期ゾーンの利回り上昇は10年債にも波及しています。
新発10年債利回りは 1.775% と、17年半ぶりの高水準を記録しました。
10年債利回りは国内の長期金利の指標であり、住宅ローン(金利固定型)や企業の設備投資コストに広く影響します。
4. 住宅ローンへの影響
足元では、以下の動きが顕著です。
- 三菱UFJ銀行・三井住友信託銀行が 10年固定型金利を引き上げ
- 固定金利は長期金利の影響を受けるため、今後も上昇の可能性
新規の住宅ローン契約者の8〜9割は「変動型」を選んでいるため、当面の負担増は限定的です。ただし、
- 金利上昇が長期化すれば、固定型の上昇が続く
- 変動型も将来的に上昇圧力がかかる可能性がある
- 住宅購入タイミングの判断が難しくなる
といった影響が懸念されます。
5. 家計が押さえておきたいポイント
金利の上昇局面では、以下の点に注意することが大切です。
- 住宅ローンの固定金利は早めの比較検討を
借換えも含め、低金利時代の常識が通用しなくなる可能性があります。 - インフレと金利の動きに注目する
補正予算の規模や国債発行計画のニュースは家計にも直結します。 - 資産運用も見直しを
長期債の急落は、債券ファンドの基準価額に影響します。
株式と債券のバランスを点検する良い機会です。
結論
超長期国債の利回りが過去最高水準に達した背景には、財政悪化への懸念や補正予算の拡大観測があります。
この動きは10年債を含む長期金利にも波及し、結果として固定型住宅ローン金利の上昇など、家計に直接影響します。
金利の上昇局面では、住宅ローンの選択、資産運用の見直し、インフレ動向への注意が欠かせません。
政策次第で金利環境は大きく変化するため、今後の補正予算や国債発行計画の動向をチェックしながら、家計の備えを進めていくことが大切です。
出典
- 日本経済新聞「超長期利回り最高水準」(2025年11月20日)
- 日本国債市場データ(財務省・日銀公表資料)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

