2026年4月から段階的に施行される年金制度改正により、個人型確定拠出年金(iDeCo)の拠出限度額が大幅に拡大します。また、加入可能年齢も働き方にかかわらず70歳未満まで引き上げられ、より多くの人が老後資金を積み立てやすくなります。
物価高が続き、将来の年金制度への不安が強まるなか、公的年金だけに頼らない「自分で準備する年金=私的年金」の重要性は高まっています。
この記事では、iDeCo・国民年金基金・付加保険料・企業型DC・個人年金保険まで、多様な私的年金制度の特徴を整理し、自分に合った組み合わせ方を考えるためのポイントを解説します。
1 2026年改正でどう変わる?iDeCoの大幅拡充
2026年4月以降、iDeCoには次の2つの大きな改正が導入されます。
■① 拠出限度額が大幅アップ
2027年1月引き落とし分から、拠出上限が次のように引き上げられる予定です。
- 第1号被保険者(自営業など)
→ 月 7万5000円(現行:6万8000円) - 第2号被保険者(会社員・公務員)
→ 月 6万2000円(企業年金の有無で異なる)
掛け金は全額所得控除の対象であるため、所得税・住民税の節税効果も大きくなります。
■② 加入可能年齢の上限が70歳未満へ
現在は原則60〜65歳前後で加入制限がありますが、制度改正により働き方に関係なく70歳未満まで加入可能となります。
老後資金を長く積み立てられる時代に変わると言えるでしょう。
2 私的年金制度は大きく5種類
公的年金に上乗せして老後資金を準備する「私的年金」は、次のような制度が代表的です。
3 国民年金基金
■生涯受け取れる“終身年金”
国民年金基金は、第1号被保険者(自営業など)が老齢基礎年金に上乗せして加入できる制度です。
特徴は次の通りです。
- 終身年金(生涯受取)
- 掛け金は全額所得控除
- 原則65歳から受給開始
- 中途解約はできない(ただし掛金の中断は可能)
公的年金に終身で上乗せできる数少ない制度のため、自営業者の「年金の柱」として重要です。
4 付加保険料(第1号限定)
■月400円で“費用対効果トップクラス”
付加保険料は、国民年金保険料に月400円を上乗せして納める制度です。
- 国民年金基金とは併用不可
- 終身で200円×付加した月数が加算
- 受給開始後約2年で元が取れる“高効率”制度
自営業者・フリーランスで、国民年金基金を使わない人に最もお得な制度の一つです。
5 確定拠出年金(DC)
DCには「個人型(iDeCo)」と「企業型DC」があります。
■共通の特徴
- 掛け金が全額所得控除
- 運用益は非課税
- 老後資金を自分で運用して増やす仕組み
- 受給は原則60歳以降
- 受取方法は「一時金」「年金」「併用」から選択可能
6 iDeCoの受け取り方と税制
■① 一時金(退職所得)
一時金で受け取る場合は「退職所得」となり、次のような優遇があります。
- 退職所得控除が適用
- 控除後の金額の2分の1が課税対象
- 長年の加入期間が長いほど控除枠が大きくなる
ただし、短期間に複数の退職金を受け取ると控除の重複が使えないため、受け取り時期の調整が重要です。
■② 年金(雑所得+公的年金等控除)
- 国民年金や厚生年金と合算される
- 公的年金等控除が使える
- 総合課税のため、税金・国民健康保険料に影響する
計画的な取り崩しをする場合はこちらが向いています。
7 企業型DC
企業ごとに受け取り方法・制度内容が異なります。
- 退職後6カ月以内にiDeCoへ移管可能
- 相場下落時に受取タイミングが重なると損失リスク
- 受給が近づいたら低リスク商品にリバランスをするのが安全
8 個人年金保険(民間保険)
民間の保険会社が提供する私的年金で、「定額型」と「変額型」があります。
■定額型
- 将来の受取額が確定
- 老後計画が立てやすい
- 物価上昇に弱く、実質価値が目減りするリスク
■変額型
- 運用成果で受取額が変動
- インフレに比較的強い
- 元本割れリスクがある
受け取りは「一時金(=一時所得)」、または「年金形式(=雑所得)」で課税区分が異なります。
9 複数制度を使う場合の“時系列整理”が重要
複数の私的年金を併用するほど、
「いつ・どの制度から・いくら受け取るか」の整理が重要になります。
■整理すべきポイント
- 受け取り時期
- 一時金か年金か
- 税負担の増減(退職所得/雑所得)
- 他の年金との重複
- 健康保険料への影響
- 資金の受け取りの“山と谷”の把握
退職金・企業型DC・iDeCo・個人年金が同時期に重なると、思わぬ税負担が発生するケースがあります。
結論
2026年のiDeCo拡充は、老後資金づくりにとって大きなチャンスです。
国民年金基金・付加保険料・企業型DC・個人年金保険などの私的年金制度は、それぞれ特徴も税制も異なります。
複数制度を組み合わせるほど効果は高まりますが、受け取り方やタイミングを誤ると税負担が増えることもあります。
まずは「どの制度を使っているか」「いつから受け取るか」を時系列で整理し、ライフプランに合わせた受け取り計画を立てることが、老後の収支を安定させる大きな鍵になります。
出典
・日本年金機構資料
・厚生労働省「公的年金・私的年金制度」
・iDeCo公式資料
・国民年金基金資料
・日本経済新聞「iDeCoや国民年金基金…老後資金、私的年金で備える」(2025年)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

