企業年金も含めた「総合老後年金ガイド」

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老後の生活資金の中心となるのは公的年金ですが、実際には企業年金や個人型年金(iDeCo・個人年金保険など)も合わせて考える必要があります。
とくに会社員・公務員として働いてきた方の場合、複数の年金制度が重なっており、「自分はどれに加入していたのか」「将来合計でいくら受け取れるのか」が分かりにくいことが多いものです。

この記事では、公的年金をベースに、企業年金・私的年金を含めて老後に受け取れる年金を総合的に整理できるよう、体系的に解説します。

1 老後資金の中心は「公的年金」

公的年金は次の二本立てで構成されています。

■ 国民年金(老齢基礎年金)

  • 日本国内の20〜60歳の全員が加入
  • 加入期間に応じて給付額が決まる
  • 2024年度の満額は約79万円/年

■ 厚生年金(老齢厚生年金)

  • 会社員・公務員が対象
  • 給与に比例する部分が加算される
  • 加入期間と収入が長いほど年金額が増える

公的年金は「終身年金」なので、一生受け取れるのが最大のメリットです。
まずは、ねんきん定期便・ねんきんネットで基礎年金+厚生年金の見込み額を確認することが出発点となります。


2 企業年金は大きく3タイプ

会社員・公務員の場合は、公的年金に加えて企業年金が加わることがあります。大きく次の3つです。


① 企業型確定拠出年金(企業型DC)

<特徴>
・将来受取額は「自分の運用次第」
・会社が拠出し、従業員が運用商品を選ぶ
・原則60歳以降に受け取り可能

企業型DCは加入者数が最も多い制度です。転職時は「個人型DC(iDeCo)」へ移す必要があります。

② 確定給付企業年金(DB:企業年金)

<特徴>
・将来受取額があらかじめ決まっている
・退職後に「年金」または「一時金」で受け取れる
・伝統的な企業(大手・インフラ系など)に多い

③ 厚生年金基金(旧制度)

・過去に多く存在したが、現在は多くが解散
・加入していた場合は、基金からの年金が別途支給されることがある

重要ポイント
企業年金は、公的年金の通知(定期便)に載らないため、
勤務先・基金・企業型DCの運営会社から届く資料で確認する必要があります。


3 公務員は「年金が手厚い」は昔の話

かつてあった「共済年金」は2015年に厚生年金に統合され、現在は会社員と同じ仕組みになっています。

ただし、公務員には次が存在します。

  • 職域加算の代替として「退職等年金給付(DC型の制度)」
  • 公務員独自の退職手当制度(退職金)

そのため、公務員の方は勤務先の共済組合からの通知物も必ず確認しておく必要があります。


4 私的年金(自分で積み立てる年金)

企業年金がない方や、自営業の方は、自分で積み立てる年金が老後資金の柱になります。


① iDeCo(個人型DC)

  • 掛金が全額所得控除
  • 運用益非課税
  • 老後資金づくりで最も税制優遇が大きい制度
  • 原則60歳以降に受け取り

特に自営業・フリーランスの方の老後資金の中心となります。

② 個人年金保険(生命保険会社)

  • 貯蓄型の保険
  • 予定利率が高い「お宝保険」(1990年代)を持つ人は優遇条件
  • 受給タイプ(終身/確定/有期)で金額が異なる

③ つみたてNISA(老後資金として利用されるケース)

  • 厳密には年金制度ではないが、
    “老後資金づくりの中心”として機能するケースが多い
  • 運用期間が長いほど効果が高い

5 総合的に「自分はいくら受け取れるのか」を確認する手順

ここからは実務的に「総合老後年金額」を確認する方法です。


【ステップ1】公的年金(基礎+厚生年金)

  • ねんきん定期便の年金見込額
  • ねんきんネットで詳細確認
  • 受給開始年齢を変えた場合のシミュレーション

【ステップ2】企業年金

勤務先によって手がかりが異なります。

■ 企業型DC

・運営管理機関からの「残高通知」
(みずほDC、三菱UFJ信託、野村DCなど)
→ 投資配分、残高、将来受取の目安がわかる

■ DB(企業年金)

・会社から届く「退職給付予定のお知らせ」
→ 将来の年金額(一時金の場合もあり)を確認

■ 厚生年金基金

・解散済みの基金でも「年金払い」が続くことがある
→ 基金名で照会する


【ステップ3】私的年金

  • iDeCo残高
  • 個人年金保険の「年金開始通知」
  • 積立型保険(養老・終身)の払込状況
  • つみたてNISAの積立額・現在価値

6 総額のイメージを作る(文章での図解イメージ)

【総合年金額のイメージ】
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① 公的年金 (国民年金+厚生年金)
  年間:△△万円
② 企業年金(DB/DC/基金)
  年間:□□万円(または一時金:××万円)
③ 私的年金(iDeCo・個人年金保険)
  年間:◎◎万円(または残高:●●万円)
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【老後の年間受取額の合計】
 合計:およそ「年間 ◇◇万円」
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この総額を把握できると、「不足分をどう準備するか」が一気に明確になります。


7 老後資金が不足しそうな場合の具体的な対策

  • 受給開始年齢を66〜70歳に遅らせる(増額効果が大きい)
  • iDeCoの掛金を上限まで引き上げる
  • 企業型DCで元本確保型のみになっている場合は運用配分を見直す
  • 個人年金保険の受け取り方法を「終身」にする
  • 60歳以降も働くことで年金額を増やす、厚生年金加入を継続する
  • 退職金の使い方を明確にする(ローン返済か運用か)

老後資金は複数の制度を組み合わせることで安定性が高まります。


結論

老後に受け取る年金は、公的年金だけでなく、企業年金や私的年金も足し合わせることで初めて全体像が見えてきます。
ねんきん定期便を起点に、企業年金の通知や私的年金の資料を整理することで、自分が将来どの程度の収入を得られるのかが具体的に把握できます。

とくに50代は、年金制度の全体像を把握し、働き方、受給開始年齢、積立額の見直しを行う絶好の時期です。
総合的に年金を理解し、早めに手を打つことで、老後の不安は大きく軽減できます。

出典

・日本年金機構資料
・厚生労働省「公的年金の仕組み」
・企業年金連合会資料
・iDeCo公式サイト
・日本経済新聞「ねんきん定期便を生かす 年金額と加入期間を確認」(2025年)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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