50代に近づくと、「老後の生活費はどれくらい必要なのか」「今のままで年金は足りるのか」といった不安が増えてきます。物価上昇も続き、以前よりも老後の生活費を心配する方が増えています。
そんな中で、まず確認したいのが「ねんきん定期便」です。毎年誕生月に届くこの通知書には、将来の年金額を見積もるための重要な情報が詰まっています。
この記事では、ねんきん定期便のどこを見れば老後資金の見通しが立てやすくなるのか、ポイントを整理して解説します。
1 ねんきん定期便とは
ねんきん定期便は、厚生年金や国民年金に加入している全ての人に誕生月に届く公的年金の通知書です。加入期間、保険料の納付状況、これまでの勤務先別の記録などが確認できます。
2009年に本格導入され、「消えた年金」問題の再発防止のため、記録の確認がしやすい形式になりました。
2 まず確認したいポイントは「年金額」と「加入期間」
ねんきん定期便を開いたら、最初に確認したいのは次の2点です。
(1)年金額の見込み
定期便の年金額欄には、棒グラフのような図が掲載されています。記載内容は年齢によって異なります。
- 50歳未満:これまでの加入実績のみで計算した年金額
- 50歳以上:直近の収入が60歳まで続く前提で、今後の見込みを含んだ年金額
50歳以上では、現在の働き方を続けた場合の将来の見込みが理解しやすくなります。
もし「思ったより少ないかもしれない」と感じる場合は、受給時期を遅らせるという選択肢もあります。年金の受給開始を66歳以降に遅らせると、1カ月ごとに0.7%増額され、75歳まで遅らせた場合は最大で84%増額となります。
(2)加入期間(受給資格期間の確認)
ねんきん定期便には、加入期間が「月数」で掲載されています。特に重要なのは次のポイントです。
- 老齢年金を受け取るためには
→ 120月(10年)以上の加入が必要 - 遺族年金(厚生年金)を配偶者が受け取るためには
→ 300月(25年)以上の加入が必要
会社員で厚生年金に長く加入している場合は問題ないケースも多いですが、転職や休職、非正規勤務の期間があった場合は確認が欠かせません。
3 「加給年金」や「振替加算」は定期便に載らない
実は、定期便にはすべての年金情報が載っているわけではありません。
特に見落としがちなのが次の制度です。
- 加給年金:年下の配偶者がいる場合、配偶者が65歳になるまで本人の厚生年金に加算される制度(現在の年額 約42万円)
- 振替加算:加給年金とセットで付く小規模の加算
これらは定期便に記載されないため、対象者かどうかは別途確認が必要です。
加給年金は、本人の厚生年金加入期間が240月以上であることが要件の一つとなります。
4 加入期間が足りない場合の「合算対象期間」
人によっては、国民年金の未加入期間や未納期間が多く、60代になっても必要な月数に届かないケースがあります。
その際に知っておきたいのが「合算対象期間」です。
合算対象期間は、年金額には反映されませんが、受給資格期間(120月や300月)には含めることができます。
代表例は次のとおりです。
- 1986年4月以前の専業主婦の未加入期間
- 1991年4月以前の学生の未加入期間
- 20〜60歳の間で被保険者でなかった期間の一部
加入期間が不足している場合でも、合算対象期間を加えることで受給資格を満たせる可能性があります。
心当たりがある場合は、年金事務所で記録を確認してもらうことが大切です。
5 企業年金などは別ルートで確認
ねんきん定期便に記載されるのは、あくまで国民年金・厚生年金などの「公的年金」だけです。
企業が独自に用意している企業年金や確定拠出年金(DC)などは、会社や運営管理機関で別途確認が必要です。
結論
ねんきん定期便は、老後資金づくりの出発点として、最も重要な情報源の一つです。
特に50代を迎えたら、年金額の見込みと加入期間を丁寧に確認し、受給開始年齢や働き方の見直しを検討するタイミングです。
「思ったより少ない」「加入月数が足りないかもしれない」など不安がある場合は、年金事務所での相談や、合算対象期間の確認を早めに行うことで、老後資金の見通しが立てやすくなります。
今の状況を正しく把握することが、安心できる老後の第一歩です。
出典
・厚生労働省資料
・日本年金機構「ねんきん定期便」制度概要
・日本経済新聞「ねんきん定期便を生かす 年金額と加入期間を確認」(2025年)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

